宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

一禾あお退団




一禾あお、退団されるのですね。






彼女の演技で一番印象的だったのは、『蒼穹の昴』新人公演での李春児役(本役:朝美絢   糞拾いから宦官の身になり、西太后のそば近く仕え出世する)でした。


本役の朝美絢の春児は「逆境においてなお失われぬ無垢、徳の高い人」の印象が強く、


一禾あおの春児には「ハングリーであれ。愚か者であれ。」という言葉に響き合うものを感じました。



思えば、『Lilac(ライラック)の夢路』ランドルフ[ドロイゼン家の四男、政府高官の秘書]役や王逸(優秀な科挙官僚。李鴻章配下の軍人となる)


で見せた、タフな交渉人の側面。


『夢介千両みやげ』新人公演三太【本役・和希お銀の仲間でスリの少年、情報屋】役で見せた、幼少期から修羅場をくぐりつつも「顎で受け止めて、ニヤリと笑って 笑顔!」っぷり。


これらの側面が『蒼穹の昴』という壮大な大河ドラマの、実質的な主役・李春児というお役の存在にリアリティを与えていたと思います。


2023年10月1日(日)に開催された第56回『宝塚舞踊会』を最後に、男役・一禾あおの時間は進まなくなってしまいました。


もしも後世、宝塚歌劇団の歴史を振り返る時が来たら。


彼女の演じた一番大きな役は、2023年10月1日まで雪組のジェンヌとして舞台に立って積み重ねた日々への想いを元に、


陸の竜宮城だった劇団の、玉手箱(あるいはパンドラの箱)を開けたタフネゴシエーター役だったのかもしれない。


彼女のこれからの人生の幸福を切に祈ります。