三谷幸喜話題のソーシャルディスタンス演劇「大地」感想
これは三谷幸喜によるソーシャルディスタンス演劇「大地」のネタバレ感想です。
三谷幸喜による完全ソーシャルディスタンス演劇「大地」
PARCO劇場『大地(Social Distancing Version)』公開フォトコールより(2020.7.1)
大泉洋:PARCO劇場オープニング・シリーズ「大地(Social Distancing Version)」
架空の独裁国家。俳優たちが思想犯収容所に収容され、演じることを禁止される。入所者はほぼ皆一流役者ばかりだが、演じることを禁止された役者は、羽を折られた鳥。
でも、演じたいのが役者の性(さが)。彼らは役人相手に一世一代の大芝居を打つのだが・・・
この週末は雪組の炎のボレロを配信で視聴する予定だったのですが、ふっと予定が空いたので、
PARCO劇場再開第一弾にして、大規模商業演劇として「完全ソーシャルディスタンス演出」が話題になった「大地(Social Distancing Version)」の大阪大千秋楽を、配信で視聴しておりました。
拝見した感想は、ソーシャルディスタンスという制限を逆手にとって、
逆境をバネにしたほうが面白いお話が書けてしまう三谷幸喜氏の面目躍如。
テーマは奇しくも、「誰一人欠けても芝居の幕はあがらない」ということでした。
「お前の代わりならいるから」
群像劇ですが、主役?というかドラマを動かすキーになる役は、大泉洋演ずるチャペック。
チャペックは、劇団時代は役がつかない3流役者。
でも収容所では、芝居以外何もできない役者バカたちの世話を焼き、監視役の役人たちとの間を取り持ち、貴重なタバコやシップを手に入れて、
収容所での「思想のお勉強」の時間に、役人が作ったしょうもない芝居を演じることになった時も、文句を言いながらも喜々として裏方として活躍、
と優れたマネジメント能力を発揮し、
「もしかして、俺の居場所、ここかも?」と内心思っているふしがある。
いけ好かない役人に、皆で大芝居をうって一泡吹かせるものの、代償は大きかった。
役人の怒りは想像以上で、
連帯責任で全員が「谷の向こう(おそらく、行ったら生きて帰れない、もっと過酷な死の収容所」)」行きになりそうなところ、
なんとか「誰か一人が代表で谷の向こうへ行く」ことで収まることとなった。
誰が行くの?
収容所にいるのは、代わりがいない、一芸に秀でた役者ばかり。
・・・チャペック以外は・・・
結局、”互選”の結果、谷の向こうに送られたのはチャペックだった。
残ったのは、一流役者ばかり。
さあ、芝居の稽古の続きをしようか、
できなかった。
どんな名優も、「裏方」と「観客」を失ったら、芝居は成り立たないのだ。