炎のボレロ タイトルが本質をついている宝塚の典型作
『炎のボレロ』『Music Revolution! -New Spirit-』無事千秋楽、おめでとうございます。
これぞ宝塚の典型作
柴田先生の名作のタイトルは、「うたかたの恋」、「仮面のロマネスク」、「アルジェの男」等、芝居を見終わった後にタイトルを再見して、
ああ、「このお芝居は、つまりこういう話なのか」という本質をびしっと一言で要約しているなあ、と感心します。
今回の「炎のボレロ」、正直に申しますと、先に挙げた再演を繰り返してきた作品群に比べると、ストーリの構成はちょっと弱いかな、と思うところもあるのですが💦
柴田先生の代表作では無いかもですが、
これぞ宝塚の典型作。
世間の人(全ツで初めて宝塚を見る方)が「宝塚ってこんなものかな?」と思っているイメージそのまんまをこれでもかとつめこんで、
幕開きは華やかなラテンの祭りだ、カーニバルだ!で全ツのお客さんの心をわしづかみにする。
背景ではおそらく世界史の大波がうねっているが、それはセリフで語られるけれども、舞台の上で直接は描かれず、
宝塚は世界史Bの授業ではないのだから、別に背景がわからなくても、なんとなく「あ、何か陰謀が進んでる」くらいのふんわりした理解でOK。
アルベルト(メキシコの地主のおぼっちゃん)×カテリーナ(フランスの上流階級令嬢)
ジェラール(フランス白人)×モニカ(メキシコの褐色の肌の娘)
主役の陽と2番手の陰、白い肌と褐色の肌、上流階級と庶民階級、宗主国と植民地、
鮮やかな対比を描くカップルの恋愛シーン(全ツのお客って、ほんとに舞台初心者だと、トップと2番手、娘1と娘2の見分けすらつかなかったりするけれど、これはわかりやすい!)
初めて宝塚を見る方にも、男役ってカッコイイ!!
ごちゃごちゃ理屈は不要。
全国で、宝塚鑑賞が一生にその1回限りかもしれないお客様に、宝塚ってこういうものだ!とお客様が望むものを存分にバン!と提示して、3時間楽しんでいただけたら、
OK!
「芝居とショー、合わせて一つの作品」という粋な計らい
宝塚って芝居とショーの2本立てで、基本、芝居とショーはお互い関係ないのですが、
今回伴演の『Music Revolution! -New Spirit-』は3度目の上演にあたり大幅に変更されていますね。
中村A(中村 暁)先生と中村B(中村 一徳)先生、たぶん打ち合わせのうえ、芝居のテーマに合わせてショー『Music Revolution! -New Spirit-』の場面をキューバ(サルサ)、ブエノスアイレス(タンゴ)といった「ラテン音楽のシーン」に変えたのでは?
(19世紀以降のポピュラー音楽(サルサとかルンバとか、ジャズも)は、中南米やニューオリンズでスペイン、フランス、そしてアメリカの白人入植者の伝えた西洋音楽理論と、黒人奴隷の伝えたアフリカのリズム・ビートが出会って生まれました。)
大きく変わったのはプロローグ後がスペインからキューバに変わり、そのあとのジャズの場面が朝美を中心としたブエノスアイレスの場面に、さらに中詰めのあとの「ニュースピリット」の場面は、もともと大劇場で彩風がプロローグ後に担当したジャズの場面を再現した形になっている。箱は同じなのだが中身の具がかなり入れ替わった新しいレビュー定食といった趣。https://ameblo.jp/takarazukakagekishikyoku/entry-12621174639.htm
「ボレロ」はメキシコで生まれたミュージック・レボリューション
フランスの作曲家ラヴェルによる「ボレロ」
東京バレエ団 モーリス・ベジャール振付「ボレロ」
日本の曲でボレロといったら「水戸黄門のテーマ」
大洗高校 マーチングバンド部「水戸黄門のテーマ」
ふざけてないよ!ボレロとは「ダン・ダダダダン」のことなんだよ!
ラヴェルのボレロは、繰り返す通奏低音「ダン・ダダダダン」に乗せて、2種類のメロディが微妙にアレンジされつつ、楽器を弾き継ぎながら反復されていく曲。
ボレロとは元々スペインの音楽で、植民地であるキューバに伝わり、メキシコで発展、その後アメリカで社交ダンスとして人気の音楽ジャンルとなりました。
「炎のボレロ」はスペインから独立したメキシコを舞台に、
「ダン・ダダダダン」を繰り返す通奏低音(歴史の足音)にのせて、
これまで宝塚で先輩スターたちが繰り返し演じ継いできた、ど真ん中、王道のストーリー、どこかで何度も見た場面を、
まるでボレロのように、今のスターが楽器パートを変えるようにひきつぎ、リフレインする。
まとめ
つまり炎のボレロの裏主役は
「ボレロ」