宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

エリザベートがブロードウェイで上演されない訳


アナスタシアより3曲歌唱

宝塚歌劇宙組公演 三井住友カード ミュージカル『アナスタシア』特別プロモーション映像
♪She walks in(真風 涼帆)
♪The Neva Flows(芹香 斗亜)
♪Journey to the past(真風 涼帆・星風 まどか)


うう、せっかくの真風 涼帆氏のためにブロードウェイスタッフが書き下ろしてくださった新曲が、素敵な曲なのに、ちょびっとしか聞けない・・・もっと聞きたい!ロング映像あるかしら?



♪Journey to the past と ♪My Ptersbrugの全容はこちらから

葵わかな&木下晴香らが初の歌唱披露!ミュージカル『アナスタシア』製作発表丨エンタステージ


わずか数日しか上演されなかった日本初演の映像はこちら(ラストネタバレあり)

ミュージカル『アナスタシア』日本初演公演スペシャルプロモーションビデオ


ブロードウェイでヨーロッパ王朝ネタって珍しいよね

Wiki情報によると、不思議なんですけど、ウイーンミュージカル「エリザベート」って、ブロードウェイでは上演されていないそうです。あんなに面白いのにねえ。


さらにはエリザベートのクンツェ&リーバイコンビの「モーツァルト!」も「マリー・アントワネット」も「レディ・ベス(エリザベス1世の話)」も、ヨーロッパ各国やアジア(日本・韓国)での上演はあっても、ブロードウェイでの上演歴はなし。


そういえば、ブロードウェイのヒット作で、19世紀以前が舞台の作品はたくさんありますが、宝塚で大人気の「ハプスブルクやブルボン王家が出てくる、王侯貴族の不倫や革命がテーマの話」ってあまり思いつかないなあ。


そっち系の需要をフレンチミュージカルやウイーンミュージカルが満たしてくれているわけですが。
『アナと雪の女王』とかは、リアル王家のプリンセスとはまた別ですし・・・


最近のブロードウェイで歴史ものというと・・・『ハミルトン』



Hamilton the Musical on Broadway
↑オバマ大統領やヒラリー・クリントンも絶賛した、アメリカ独立戦争の英雄アレクサンダー・ハミルトンのお話。

アメリカの歴史は、ベルばらの頃にやっと始まる

『ハミルトン』は、ベルばらと同時代(フェルゼンはアメリカ独立戦争に参加している)のお話。日本では将軍様は11代目の徳川家斉、松平定信が寛政の改革をやっている、江戸時代も後半、だいぶ明治に近づいてきたなあ、というころ。


アメリカにはネイティブアメリカンがいて、移民の歴史や奴隷の歴史もあって、それぞれにルーツを持っているけれど、さて「アメリカ合衆国の歴史」はいつから始まるのかというと、


日本でいうあかねさす大化の改新が、独立戦争にあたる、というくらい歴史が若い。


日本ではうちの地元でも、空海ゆかりの寺やら、天神さんやら、源平合戦の古戦場やら、ああ教科書で習う歴史ってここであったんだなあ、という史跡がゴロゴロしていて、それは欧州でも同様でしょうが、


アメリカって、いきなりベルばらのころから「アメリカ合衆国の歴史」が始まるわけで、日本とはだいぶ歴史観が違うんだろうなあ、と思うんです。


当然王様もいないわけで、日本人がワイドショーでやんごとなき方の恋愛事情を見ながら、親戚の子でもないのに勝手に気を揉む、的な感覚が全く無い文化圏で、王家に嫁いだ女性の悲劇ってどう受け止められるのだろうか、と思うと・・・


ブロードウェイの興行主がエリザベートを買わない理由ってそこかしら。


アナスタシア伝説がアメリカにあった

「神々の土地」に出てきたロマノフ皇帝一家は皇太后以外、皇帝夫妻もオリガもアレクセイもアナスタシアも、1918年にみんな処刑されていました。


が、政府は「皇帝の家族は安全な場所にいる」と偽りの発表をしました。すると世界中に「我こそはアナスタシアなり」という者が出るわ出るわ、一説には20人以上の自称アナスタシアがいたそうです。


その中でも特に有名だった方が、アンナ・アンダーソン(1896~1984年)アンダーソンは1920年、記憶喪失のためドイツ・ベルリンの精神病院に入院していたところ、周囲の人間から「あなた、皇女アナスタシアに似ているわね」と言われ、本人もそう思い込むようになります。


アンナ・アンダーソンには「彼女こそアナスタシアだ」と信じて支援する者も現れ、ロマノフの遺産相続の権利を主張して裁判を起こしたり、アメリカに渡り社交界の有名人となったり、波乱万丈な人生を送り、88歳の天寿を全うします。


つまりアメリカ人にとって、アンナ・アンダーソンは、ひょっとしたらロマノフの皇女がアメリカで余生を送っていたかもしれない、アメリカ人のロイヤルへの憧れをくすぐる存在で、今でも彼女に関する書籍が出版されるほどの方だそうで。



それゆえアナスタシアはブロードウェイで欧州の王侯貴族ものだけどヒット(2年間のロングラン)したのかも。上手いこと見つけましたね。