宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『プロミセス、プロミセス』配信の壁、著作権問題を考える

『プロミセス、プロミセス』初日!おめでとうございます。



『プロミセス、プロミセス』著作権問題を考える


Highlights from "Promises Promises" on Broadway with Tony-winner Katie Finneran



配信、円盤化の有無について、まだ発表がありませんね。


ブロードウェイミュージカルゆえの著作権の壁?


ところで、著作権とは?


お客の前で上演できるのに、配信はだめなの?お金を追加で払っても?




著作権は、著作物を保護するための権利です。


一口に「著作権」と言っても、その内容は束のように複数に分かれているそうです。


宝塚での上演・ライブビューイング・配信・円盤化スカステ放送に必要な著作権はそれぞれ別の権利のようで、



舞台での上演に必要な権利

上演権:音楽の演奏会や演劇の上演のように、多くの人に著作物を直接聴かせたり、見せたりする権利。演奏を収録したCDなどを多くの人に聞かせることも含まれます。



翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などの方法で二次的著作物を作る権利。


お客さんからお金をとって上演することにあたり、これらの権利は当然クリアしているでしょう。



さらに、「舞台の模様を収録したもので、お客からお金を取ること」については、それぞれ別の権利を取得する必要があるようです。



ライブビューイングに必要な権利?


上映権 フィルムやDVDなどに収録されている映画、写真、絵画などの著作物を、多くの人に見せるためにスクリーンやディスプレイ画面で上映する権利。


配信・スカステ放送に必要な権利?


公衆送信権 テレビ・ラジオ・有線放送、インターネットなどによる著作物の送信に関する権利。


ホームページに著作物をのせて、だれかからアクセスがあれば、いつでも送信できる状態にすることは「送信可能化権」として、この権利に含まれます。

円盤化して販売するために必要な権利?

譲渡権 映画以外の著作物またはその複製物を多くの人に販売などの方法で提供する権利。


契約は劇団と著作権者の交渉によって個別に決められます。


映画については、昔からまず映画館で上映して、次にビデオテープや円盤化したパッケージで販売し、さらにTVなどで放送する、というコースがお決まりなので、


原作の著作権者と映画製作会社は、最初からコンテンツを円盤化や放送することを前提に契約していると思われます。



舞台演劇作品において著作権者が守りたい権利は、「将来にわたって舞台で繰り返し上演して収益をあげる」権利です。


宝塚は今でこそライブビューイングや配信は当たり前ですが、数年前までは当たり前ではありませんでした。


「舞台は生で見てこそ。配信すると生の舞台を見に来るお客が減る」


という懸念は当然あるでしょう。ブロードウェイミュージカルはロングランが前提の興行形態です。配信という形態自体、ごく最近の楽しみ方です。


ブロードウェイミュージカルでも「アナスタシア」など最近上演されたものは、最初から映像の配信や円盤化についてもOKな形で契約できるように整備されているかもしれません。


『プロミセス、プロミセス』はどのような契約書なのかはわかりませんが、『プロミセス、プロミセス』の初演は1968年。


まだ舞台の模様を撮影して販売したり、配信したり、という概念が無い古い時代のコンテンツです。


もしも今回の『プロミセス、プロミセス』が配信・円盤化されない場合、考えられる可能性は、


仮説1 著作権者が「舞台は生で見てこそ。映像化、配信は一切認めません」という方針である。


もう、これはしょうがない。


『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』の初演は2012年ですから、『プロミセス、プロミセス』とは権利関係の構造が違う可能性はあります。


仮説2 お金を払えば上演権にプラスして公衆送信権も取得できるかもしれないが、予算の制限がある。



直近でブロードウェイミュージカルだけど配信できた『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』と『プロミセス、プロミセス』を比べると、公演そのものにかけられる予算がだいぶ違うと思います。



『プロミセス、プロミセス』
シアタードラマシティ10公演
全席8,000円
10公演×898席=8,980席


東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)12公演
S席8,300円 A席5,000円
12公演×1,300席=15,600席



『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
梅田芸術劇場 11公演
S席9,000円 A席6,000円、 B席3,000円
11公演×1905席=20,955席


東京国際フォーラム ホールC 16公演
S席9,500円、A席6,000円、B席3,000円
16公演×1502席=24,032席


販売座席数は
『プロミセス、プロミセス』24,580席
『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』44,987席


S席、A席、B席の割り当てがわからないのですが、席数だけを見ても、チケット販売による収入は倍以上違うはず。


つまり、舞台にかけられる予算が倍違う→公衆送信権を取得するためには、著作権料を大幅に追加で払う必要があるが、そこまでの予算が無い。


この場合…配信はだめだったが、円盤化は可能、という可能性もあるので、発表を待ちましょう。