宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ナル男が悪役令嬢に転生シシィ?明日海りおコンサートASUMIC LAB配信視聴感想



明日海りお1st Concert -ASUMIC LAB-を配信で視聴いたしました。



最初この会社と何か映像関係でコラボしているのかと思っていました。



コンサートのコンセプトは、



今回は「明日海りお」を構築している、四つの世界観を掘り進めていくような構成になっており…

タイトルに「LAB」(実験室、研究室)を加えております。


クール、ガーリー、エッジ、エレガント、4つの世界観に合わせて、Jポップあり、ミュージカルナンバーあり、17時開演で終演は19時45分のロングコンサート…って宝塚の通常公演はもっと長かったですね。


視聴途中で家族が帰ってきて、ごはんの用意をしながらのながら聞きとなってしまいましたし、


私は音楽については全く門外漢で、真彩希帆も縣千も両方愛している聴覚の持ち主なので、男役が卒業後、女性の音域で歌うことについての技術的な事は何も言えません。


(音程が合っているかより、歌詞が自分に刺さるか、という意識で聴いているのだと思います)


成人女性になって中二病真っただ中ソングを14歳に憑依して当事者として歌える感性

私の自我は、過去の自分に上書き保存して生きている面もあり、その時々の自分を、別フォルダを作って保存しっぱなしにしている面もあり。


明日海さんの歌唱で私に一番刺さったのは、これらの14歳の中二病思春期ソング。


私のずっとしまいっぱなしだった「14歳」フォルダを急にこじ開けてくるからびっくりしました。



鬼束ちひろ、よくぞ今まで生きてきてくれた

鬼束ちひろ - 月光


I am GOD's CHILD この腐敗した世界に落とされた

How do I live on such a field?

こんなものの ために生まれたんじゃない

こんな歌詞を「我がごと」として歌える感性って、しんどいわなあ。



もしも神様が左利きなら どんなに幸せかしれない

【Ado】ギラギラ


ああ、もう本当になんて素晴らしき世界

んで 今日も又 己の醜悪さに惑う


Ugly 正直言って私の顔は そう神様が左手で描いたみたい

必然 この世にあるラブソングはどれひとつ

絶対 私向けなんかじゃないでしょう


ナルシストみりおが転生したら悪役令嬢シシィだった件


そして一番印象的だったのは、先日のエリザガラコンでは第2幕のみの出演だったので歌う機会が無かった「私だけに」



【宝塚が本気で歌ってみた】私だけに - 宝塚歌劇団公演「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」より


明日海さんがエリザガラコンでシシィ役として歌唱した時の感想はこちら



ついこの間までトート閣下を演じていらっしゃった明日海さんがシシィ役をやっているので、トート=シシィが抑圧している無意識の具現化 という構図が浮かび上がる。


シシィにとってトートは、シシィにいったん意識化され、のちに抑圧されて再び無意識になった「イドの化け物」だったのではなかろうか。


そして今回のみりお版「私だけに」の感想は、声とか音程とか以外の背景の情報量が2重にも3重にも入り組んでいるややこしいシシィ。


例えると・・・




いま女性読者を中心に “悪役令嬢もの”と呼ばれるジャンルのコミック作品が人気を集めている。


 乙女ゲームや異世界を舞台に、ヒロインをいじめる“悪役令嬢”に転生した主人公が、悪役令嬢ルートを回避したり、イケメンと恋愛をしたり……というストーリーが多い。


ベルばらで例えると、現代のナルシスト男が転生したらマリーアントワネットで、前世の記憶でマリーがギロチンで処刑されるバッドエンドを知っているから、バッドエンド回避のために奮闘する、


みたいな「悪役令嬢」ものが、イマドキの女の子に流行っているんですよ。


今回のみりおシシィ、


現代のイケメンナルシスト男が何故か19世紀に転生して、「転生したからには、みごとに悪役令嬢シシィを演じてみせましょう」と、トート閣下と最後のダンスを踊るエンドを回避するために奮闘する話


みたいに見えました。


やっぱりこの人は役者歌で、ゲストの珠城さんがトート役、明日海りおがルドルフ役で「闇が広がる」を歌う時の、王座への渇望と孤独と怯えと、トートへの甘えすらよぎる表情。


ロミオとジュリエット「世界の王」では、ぱっとヴェローナの石畳を駆け抜ける青年の脚に戻る。


この人が歌うには憑依がいる。その依り代は、嬉しい、楽しい、幸せ!なアメリカンなヒロインではない。


いっそ、タンゴとかジャズとかブルースとかをライフワークとして取り組んでみてはどうだろう。