宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

舞台感想 誉めそやしとコテンパンのあいだ




管理人:私が宝塚ブロガーになって、お芝居の感想文をブログにUPするようになって失ったものがある。


紅子:羞恥心?「贔屓みたいな男と結婚したかった」とかよく書くわ。


ゲスの極み(元)乙女:人間としての尊厳?


管理人:そんな深刻な話をするつもりでは無かったんだけど・・・



ゲスの極み(元)乙女:何?あのどっかで聞いたパロディみたいな記事タイトル。正直に言ってごらん?タイトルで釣ろうとしているでしょ。


管理人:たしかにこのブログに広告がついているけれど、芸能人でもない私の泡沫ブログでは、当社比でバズったところで、うどんのトッピングがなすびの天ぷらから海老天になるくらいのものだもの。海老天のために魂を売る気は無いわ。


紅子:年末特別企画「私もやります!ライビュ専科大賞!」みたいなことしようとして、自分が発表してきた、中学2年生が背伸びして書いたみたいなポエム感想文を立て続けに読み返して、こっぱずかしくなったんでしょ。


管理人:まあ、それもあるんだけど。最近、出版業界でちょっと大騒動が起こっていてさ、



引用の引用になるけど、要は


2021年12月9日、プロの書評家の豊崎由美さんがTwitter上に


正直な気持ちを書きます。わたしはTikTokみたいなもんで本を紹介して、そんな杜撰な紹介で本が売れたからって、だからどうしたとしか思いませんね。そんなのは一時の嵐。一時の嵐に翻弄されるのは馬鹿馬鹿しくないですか?


あの人、書評書けるんですか?


と書き込み、


これを受けて本紹介動画を投稿するTikTokerの代表格であるけんごさんがやはりTwitterにおいて


書けません。僕はただの読書好きです。


書けないですが、多くの方にこの素敵な一冊を知ってもらいたいという気持ちは誰にも負けないくらい強いです。


読書をしたことない方が僕の紹介を観て「この作品、最高でした」「小説って面白いですね」と言ってくれることがどれだけ幸せなことか知ってますか?


というやりとりになり、結局本紹介動画を投稿するTikTokerの代表格であるけんごさんが活動休止を表明して、読書好きの間では議論沸騰。


紅子:そもそも「書評」って何?


管理人:本の内容の「批評」のことね。




事物の美点や欠点をあげて、その価値を検討、評価すること。狭義に芸術批評、ことに文芸批評をさすことも多いが、広義には政治、経済、科学、スポーツから日常生活に至るまで、人間営為のすべてを対象とする。その文章化されたものを評論という。


真の批評の根底にあるものは批評意識ないしは批評精神であり、この意味での批評は批評家の専有物ではない。


管理人:豊崎由美さんは、その本の内容のいいところも欠点も取り上げて、論理的に切れ味鋭く斬る、プロの書評家なのね。


で、やり玉にあがったけんごさんは趣味で本紹介動画を投稿するTikTokerの代表格で、




管理人:けんごさんが紹介しているのはラノベ系が多くて、30秒くらいの動画で


「すっごく感動した。絶対泣けるからオススメ!ぜひ読んで!」


と、細かい内容紹介より熱意と話術で視聴者の情に訴えるタイプ。


紅子:まあ、プロの批評家からしたら、けんごさんは小説の内容に鋭く斬りこんで考察するタイプの小説紹介ではないだろうけど、


中高生のこれから小説の世界に入る方に「とにかく面白いから!泣けるから!手に取ってみて!」とこれだけ熱く語ってくれるインフルエンサーの在り方を否定するような態度は感心しないわ。


ゲスの極み(元)乙女:ワタシだってリアル乙女だったころに、けんごさんみたいな方がいたら、もっと読む本の世界が広がったかもしれない。



紅子:で、アンタは何を失ったの。


管理人:私は宝塚のお芝居を見る時に、批評家気取りで理屈ばっかり考えながら見て、「すっごく感動した。絶対泣けるからオススメ!チケットが無い方も配信があったらぜひ見て!」という熱い心を見失っていたかもしれない。


紅子:確かにあんたの観劇感想は、原作者の人生がどうの、作品の歴史背景がどうのばかりで、アンタの感動はどこにある?


管理人:でも、書評家の人の言い分もちょっと感じるところもあって。感想って「超感動した」「泣いた」「カッコよかった」とかは言いやすいし、荒れなくて安全安心なのよ。


”欠点をあげて、その価値を検討、評価すること”をやったら、読み手に「贔屓が頑張って演じているのに、誹謗中傷しないでください!」って思われる可能性もある。


ゲスの極み(元)乙女:客からお金をとっているプロの芸に対して、欠点を指摘することは言論の自由だと思うし、批評精神の無いところに進歩はあるのか?


でも批評と誹謗中傷の境目は?


管理人:コロナ禍前の宝塚は、前売りの段階でチケット完売が普通だったから、幕開き後のSNSの評価によって売り上げに影響することはあまり無かった。


今は配信があるから、前売りチケットを買っていない人がSNSでの好評を見て「興味なかったけど面白そう、配信でちょっと見てみよう」ということが起こりうる。


紅子:裏を返すと、「この作品はここが欠点だと思う」みたいな意見を見て、「つまらなそう。配信でも見なくていいや」となることも・・・


ゲスの極み(元)乙女:難しい問題よね。


豊かな文化が築き上げられるためには、時代と場所を問わず公衆の健全な批評意識が不可欠であり、古代においてアテネの市民が実践したところのものであった。


批評精神の鈍化・喪失が文明の滅亡につながり、新たな批評精神が新文明の勃興(ぼっこう)につながった例はあまりにも多い。