発表! 輝く!?宝塚ライビュ専科大賞2021!
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というわけで、2021年版『輝く!?宝塚ライビュ専科大賞』発表です。
2位『桜嵐記(おうらんき)』
作・演出/上田 久美子
一言まとめ:南朝フォーエバー
紅子:これが1位と思っていたわ。
管理人:2021年のオリジナル作品で、ウェルメイド(巧みな脚本、構成で、ストーリーの構築が論理的にもしっかりとしている劇)という視点では1番の出来だったと思います。
楠正行の南朝への忠誠が、戦前の教育で一面的な見方で強調され、戦後は「あえて触れるのは避けよう」という扱いになり、今や忘れられた存在であった楠木正行。
「桜嵐記」上演前に戎光祥出版が実施した”第1回南北朝武将総選挙”では圏外だったのが、第2回南北朝武将総選挙”では791票中223票を獲得して圧倒的1位だったそうで。
紅子:後世の歴史家に、「楠木正行は2021年に宝塚で「桜嵐記」が上演されたのをきっかけに、一般人の間にも再評価の機運が高まった」と書かれたりするかもね。
3位 『ロミオとジュリエット』
潤色・演出/小池 修一郎 演出/稲葉 太地
一言まとめ:「愛」の「死」
紅子:まさか令和の時代に、宝塚のシェイクスピアのお芝居への感嘆が、SNSを席巻するとはね(笑)
管理人:愛ちゃんの「死」を見るまでは、5文字要約は「青春の疾走」だったんだけどね。
世界中で繰り返し上演され、宝塚でも5回目の上演だけど、演じられるたびに新しい発見がある。死せるシェイクスピア、生けるヅカオタを走らせたわね。
4位『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』
~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~
作・演出/生田 大和
一言まとめ:鎖フェチ探偵
管理人:今年の宝塚のお芝居に顕著だった、従来の宝塚ファンには情報量が多すぎて「?」だったが、原作ファンには評判がいい」系の作品。
管理人は子供の頃原作を読んでいたので、原作の最大のツッコミどころである「ホームズが滝つぼに落ちて死ぬ(後に復活)」事件について、
ホームズファンならみんな自分なりに妄想したであろう「何があったの?」についての、同人誌的2次創作として興味深かったです。ホームズの部屋の再現度など、美術も凝っていました。
紅子:が、原作を全く知らない方には「切り裂きジャックって何じゃい?」とか「?」が多かっただろうとは思う。
5位『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-
脚本・演出/齋藤 吉正
一言まとめ:主役は「1989年」の新宿ワンダーランド
管理人:オリジナルの1話完結ストーリーがいくらでもできそうなところ、
原作では連載の末期に明かされた、アニメ化されていない冴羽リョウの育ての親との対決エピソードをあえて取り上げたところは、原作ファンには好印象だったと思います。
紅子:でも、エピソードを詰め込み過ぎよねえ。「1989年の新宿」の空気感を、当時生まれていない人が多数だろう令和のジェンヌで再現したのはエライ。
6位『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出/上田 久美子
一言まとめ:「第九」の「歓喜に寄す」の歌詞の解説芝居
管理人:元々2020年に「ベートーヴェン(1770年生)生誕250年記念」として上演することありき(クラシックファンへの宣伝効果も見込める)の企画だったのかなあ。
「第九」の「歓喜に寄す」は「年末の風物詩」だけど、
「みんな、「歓喜に寄す」の歌詞の意味をわかって聴いてる?歌ってる?」
という問いかけをベースに、ラストの「絶望を突き抜け歓喜に至れ!」への過程を描きたかったのだと思う。
紅子:が、芝居の手に余っちゃったね。ベートーヴェン、ナポレオン、ゲーテ、時代精神を体現した男たちのシンポジウムになっちゃった。
18世紀のフランス革命からナポレオンへ至る欧州の歴史背景を全く知らずに見て「面白い!」となるのは難しいと思う。
7位『柳生忍法帖』
脚本・演出/大野 拓史
一言まとめ:大江戸「HiGH&LOW」!将軍家喧嘩指南役二代目勘当中柳生十兵衛(笑)
8位『アウグストゥス-尊厳ある者-』
作・演出/田渕 大輔
一言まとめ:「アレクサンドロスの夢」と聞いてピンと来る方には面白いと思います。
史実に沿った物語の進行と、主人公の行動がほとんど関係なくね?
大賞:『元禄バロックロック』
作・演出/谷 貴矢
一言まとめ:令和のカブキロック
紅子:これまで幾度となく演じ続けられてきた忠臣蔵の物語。
でも現代人の目から見たら、
「ルール違反の暴行事件を起こして切腹になった殿の敵討ちのために、47人がかりで復讐だ!」
「うん、わかるう!がんばれ!」
と言いづらいところもあるよねえ。
管理人:今の時代に忠臣蔵を演じるにあたり、タイムリープの概念を取り入れ、
「そもそも討ち入るって、どうよ?」という根本に踏み込んだ令和のカブキロック。
元禄時代に生まれた、琳派や江戸歌舞伎など、今では古典とされている文化だって、最初世に出たときは「ひゃあ、こいつはすげえ」というオドロキがあったはずなのね。
文楽や歌舞伎で有名な「仮名手本忠臣蔵」も、史実の赤穂事件とはずいぶん違っていて、「討ち入りしなかった者たち」を主軸に、討ち入りの悲劇を描いている。
江戸時代のお客が、「仮名手本忠臣蔵」初演を見た時の「うひゃあ」という衝撃を、現代にスライドさせた斬新さ、アイデアに敬意を表して、”2021年ライビュ専科大賞作品”とさせていただきます。