宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ワイルドホーン版宝塚でも上演可能な『北斗の拳』




フランク・ワイルドホーン『北斗の拳』ミュージカルに挑む


ゆく年、くる年。皆様、年越しの準備は順調でしょうか。


ミュージカル版『北斗の拳』こと『フィスト・オブ・ノーススター』の配信を視聴した管理人です。(1月4日まで見逃し配信あり)


※白羽ゆりさんも出演されています。



ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』舞台ダイジェスト(ユリア/平原綾香・トキ/小野田龍之介・シン/植原卓也・レイ/伊礼彼方・ジュウザ/上原理生・ラオウ/福井晶一・リン/山﨑玲奈)



※エルサレムを追われた「さまよえるユダヤ人」みたいな世界観ですが、「21世紀の南関東の話です。

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』舞台ダイジェスト(ユリア/May’n・トキ/加藤和樹・シン/上田堪大・レイ/上原理生・ジュウザ/伊礼彼方・ラオウ/宮尾俊太郎・リン/近藤 華)

▼STORY


一子相伝の暗殺拳『北斗神拳』の継承者の座を巡り、長兄ラオウ、次兄トキ、三男ケンシロウが修行に励んでいた。


最も腕力に優れていたのは長兄ラオウ、だが師匠は三男ケンシロウを継承者に指名した。


納得いかない長兄ラオウは、師匠を殺して出奔する。


そして20XX年、世界は核の炎につつまれた。世界の文明も秩序も崩壊した。


強い者だけが生き残れる、暴力だけが支配する世界に覇王として君臨し、暴虐の限りを尽くすラオウ。


ケンシロウは旅の中で愛と哀しみを知り、ラオウとの宿命の対決に向かう。


感想 コンプライアンスに配慮した世紀末無法地帯って

『北斗の拳』の原作漫画は、1983年から少年ジャンプに連載されました。


当時の少年ジャンプの連載は、最初の10週分のプロットを固めたくらいでまず連載を始め、


読者アンケートの評判が良ければそのまま連載続行、人気が下がれば打ち切り、という弱肉強食の世界。


とにかく盛り上げるために、唐突な「えっ、お前が裏切るんかい!」が連発し、特に伏線もなく「死んだはずのキャラが、実は生きていた」展開に驚愕する、


リアルタイムで1話ずつ読んでいるぶんには毎週ワクワクですが、


後になって最初から読み返すと、令和の社会的な規範をおもいっきり逸脱している世界で繰り広げられる、バロックロック・ロックンロール。


アニメのオープニングが


「YouはShock 愛で空が落ちてくる」


こんなフレーズ、よく思いついたな・・・


コミックスで第1巻 - 第16巻までにわたるお話を、2時間40分ほどにまとめるにあたり、



ケンシロウ:「てめえらの血はなに色だーーーーっ!!」

「てめえらに今日を生きる資格はねぇ!!」



✊✊✊✊✊北斗百裂拳!✊✊✊✊✊


あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた 


おぅわったぁ!!


「おまえはもう死んでいる」


モヒカンザコ敵:「あべし」


と、原作を知る人には忘れがたい名キャラが次々登場し、名シーン、名セリフを次々と再現する、よくできた総集編だったと思います。偏差値57!



・・・んー 個人的にはなあ・・・


昭和の頃の、少年誌とはいえ、令和に比べればゆるゆるなコンプライアンスだったから表現できた暴力表現は、女性観客が見ても嫌悪感を抱かないようにずいぶんとマイルドになりました。


でもなあ。「コンプライアンスに配慮した無法地帯」表現ってなんやねん。


世紀末覇王を目指す男たちの死闘が、


南関東を舞台にした、拳法道場の兄弟たちの骨肉の相続争い


くらいのスケールになってしまったなあ。


ワイルドホーン氏の楽曲も、この「北斗の拳」という世紀末の暴力に満ちた特異な世界への「あてがき」というより、


・・・なんというか「綺麗で高品質な汎用品」の音楽を当てがっている感じなのね。



「愛で空が落ちてくる」というには、登場人物の描写が均等に広く浅い、暴力表現もひどくないが、半面の権力と愛への渇望もあんまりヒリヒリ感じない総集編なのね。


いっそ原作のコミックス11巻~16巻あたりのクライマックスに焦点を絞り、


世紀末覇王ラオウの、


いくら修行しようとも、拳では得られなかった育ての親の情愛、
腕力で奪ったユリアからは得られなかった情愛、


「だから今日より明日より愛がほしい 夢より愛する君がほしい すべてが」


といった孤独な魂の慟哭を掘り下げたほうが、観るものにもっと何かを残したかもしれないなあ。


『HiGH&LOW』すみれコードに配慮した暴力表現とは


なんで年末、こんな世紀末な世界に浸っているかというと、先日鑑賞した映画『HiGH&LOW』の「脚本偏差値32」っぷりに衝撃を受け、


口直しじゃあ!と衝動的に手を出した次第でして。


『HiGH&LOW』って、2時間中90分はひたすら殴り合っているけれど、『北斗の拳』に比べたら、登場人物の描写は類型的で、


「地元大事!」「仲間大事!」「喧嘩したら拳でわかりあえる!」


「物語」というより「ケンカのPV」集である。


宝塚版『HiGH&LOW』も、すみれコードに配慮したケンカ表現にするのでしょう。


「えぐい暴力でしか生きられぬ世界」を「えぐい暴力表現抜き」で描く、ねえ。


・・・いっそ、真風氏のラストなら「暴力に溢れた世界でしか生きられぬ者の哀しみ」を描いてほしい。


『HiGH&LOW』の作品偏差値を、37から67に引き上げてほしい。


そうでなきゃ、そもそも宝塚で『HiGH&LOW』をやる意味って何だ。


#北斗の拳 #フィスト・オブ・ノーススター