『応天の門』新人公演感想
『応天の門』新人公演を配信で視聴いたしました。
感想を一言で申しますと、
見た目は子供、頭脳は大人!(というか飛び級でスタンフォード大に入学した高校生くらい)
な少年探偵たちの”平安朝クライム”感が本公演よりもあり、気楽に楽しめました。
月城道真、怨霊になるのも納得
昔から、ナントカと、校長先生のスピーチと、読書感想文の課題図書は短い方がいい、と申しますね。
月城さんの道真は、『文部科学省推薦 読書感想文課題図書』のようなんですよ。
もしも中高生が、学校の演劇鑑賞事業でこの舞台を見て、先生から「観劇後は観劇感想文を書いてもらいます」と言われていたとします。
原作を未読でも、30分くらい舞台を見ていたら
”ははーん、この舞台を見たら、
「悪を見過ごしてはいけません」
「人は適材適所に置くことで輝く」
「鬼とは人の心の中にあるのです」
そういうポイントを押さえて感想を書いて先生に提出したら、合格点は貰えるだろうな”
と”読めて”しまうでしょうし、その予想は裏切られない。
教育上大切なことだと思いますし、間違っていないと思います。
が、大人になって、演出家の
「こういう気持ちになるのが教育的に正解ですよ」
という意図が透けて見える舞台にお付き合いするのも、悪くは無いのですが、ワクワクしますか、ねえ。
そして月城さん演じる道真の行動原理が、挫折した感受性,社会的抑圧により閉ざされ沈殿した抵抗意識、
朝鮮語でいう
ハン【恨 han】
に近いものを感じました。
朝鮮語で,発散できず,内にこもってしこりをなす情緒の状態をさす語。
怨恨,痛恨,悔恨などの意味も含まれるが,日常的な言葉としては悲哀とも重なる。
挫折した感受性,社会的抑圧により閉ざされ沈殿した情緒の状態がつづくかぎり,恨は持続する。
月城さんの道真は、根底にルサンチマン(憤り・怨恨・憎悪)があって、ありあまるルサンチマンが身を亡ぼし、非業の死を遂げた後は怨霊になるんだろうなあ、と思いました。
七城 道真、太政大臣になるのも納得
七城さんの道真は、江戸川コナンとか、飛び級でスタンフォード大に入学する高校生のような地頭の良さと、明朗な正義感があり、
留学してMBAをとって起業して成功し、
「世の中を変えるため、政治家になる!」タイプで、
太政大臣を目指すのも納得のキャラ。
仲間たちも少年探偵団というか、
在原業平(一輝)はスタイリッシュな洋犬っぽくて、
伴善男(毬矢)はムードメーカーのサルで、
白梅(花妃)が飛び回るキジ、
昭姫(羽音)は世話焼きな乙姫、
auの三太郎シリーズみたいな、ライトでポップな「鬼退治の物語」になっていて、けっこう楽しかったです。
藤原高子(きよら)の、豪邸でリードで繋がれて飼われているヤマネコのような眼も印象的でした。
民衆たちのダンスの場面も、本公演は月城道真に合わせて「抑圧された民衆のエネルギーのうねり」的なものを感じましたが、
新人公演の民衆たちの踊りは、もっとあっけらかんと楽しそうでした。