『夜明けの光芒』感想
19世紀初頭イギリス、テムズ河口近くの片田舎。
姉の嫁ぎ先である鍛冶屋に引き取られた孤児のピップは、近所の大邸宅に住むミス・ハヴィシャムから養女エステラの遊び相手として招かれる。
高慢だが美しいエステラに心惹かれ、彼女に見合う紳士になりたいという願いを抱くピップだったが、間もなく義兄のもとで鍛冶屋の道を歩み始める。
それから数年後、突然ピップのもとに莫大な財産の相続人に指名されたとの知らせが届く。
紳士になる為、故郷の人々に別れを告げロンドンへと旅立つピップ。
田舎暮らしとは一変した、夢のような暮らしを謳歌する彼を待ち受けるものとは…。
21世紀初頭の日本、うどん県の片田舎。
突然こんちゃんのSNSに
「おめでとうございます!]
「私はロンドン在住の弁護士です。」
「あなたは、イギリス貴族の莫大な財産の相続人に指名されました!」
「遺産を受け取るにふさわしいレディになるためのレッスンをいたします。現金を持ってヒースロー空港へ…」
うどん県の田舎暮らしとは一変した、夢のようなロンドンのテムズ河岸タワマン暮らし。
管理人はそこで、格差社会の実態、果てしないマウンティング合戦に神経をすり減らす超富裕層たちを目の当たりにする。
愛した人は貴族なんかじゃなく犯罪者の家族、転がり込んだ遺産は反社会的勢力からの資金だった…
紅子:いきなりなんなの…
管理人:最近わたしのスマホに、こんなメッセージばっかり入ってくるのよ…
紅子:明らかに詐欺でしょ。でもそんな詐欺にひっかかる方も多いってね。
管理人:このストーリー自体が、
「もしも自分の口座が詐欺集団の犯罪に使われて、たまたま犯人のしくじりで犯罪収益が転がり込んできたら」
というお題のX(旧Twitter)投稿がバズって、
バズり目的で
「国際ロマンス詐欺にひっかかる夢婦人」
「悪役令嬢」
「「僕が 先に 好きだったのに」展開」
などの要素をモリモリにしたようなお話だよね。
紅子:同じ古典文学でも、「仮面のロマネスク」のような、「働いたら敗北」な価値観で生きているやんごとないお方が、庶民の共感なんて一ミリも求めていない価値観のバトルを繰り広げるお話とはずいぶん違うよね。
管理人:セリフも文学的な「行間を読め」なところが無くて、直球のやりとりでわかりやすいしね。
まあベタっちゃあベタなお話だけど、ディケンズが英国の国民作家として愛され続けている理由がわかるわ。階級社会のイギリスで、「勤労して得た収入で生活する者」の誇りを描いているもの。
紅子:で、ラストはギャンブル依存症からの借金で収監されそうなところを、義理の兄の老後資金で救われ、
「教訓:真面目に働け」
なエンド。
管理人:最近もどこかで聞いたような...設定を21世紀に置き換えてもありえそうなお話だよね。
紅子:ディケンズ文学の、現代に通じる普遍性ですね。