彩風咲奈サヨナラショーで初めて気づいた魅力
彩風咲奈さよなら公演『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-の千秋楽、サヨナラショーを配信で視聴しました。
彩風の芸風には、オリンピックの新体操競技で、国の代表のスポーツエリートの演技を見る時のような雰囲気を感じていました。
長い手足を生かしたスタイリッシュなダンスの美と、天に投げたボールの行方を凝視するような、遠い憧れを宿したまなざし。
サヨナラショーでは、「ブルースレクイエム」(もとは映画『俺たちに明日はない』を原作にした荻田浩一作『凍てついた明日-ボニー&クライドとの邂逅(かいこう)-』の劇中歌)が白眉でした。
彩風ソロから朝美が歌い継ぎ、
彩風と夢白がデュエットダンスを踊ってラスト、クライド(彩風)がボニー(夢白)にグッと腕を差し出した瞬間のかっこよさったら!
『BONNIE & CLYDE』では、銀行強盗の逃避行の果てに、警官たちが待ち伏せるルイジアナ州道154号線をギブスランドからセイルズに向かう道、
クライドがボニーを、あの世への道行にエスコートする腕。
ミュージカル『BONNIE & CLYDE』は、一つ間違うと
「ザ!世界仰天ニュース 2時間特別版 伝説の連続銀行強盗カップルの真実!」
になりそうなお話を、見る客に
「死を抱え込まない人生に、どんな真剣さがあるだろう」
という感慨すらわき起こしました。
男性の俳優だって明日の保証はない職業ですが、大劇場のメインキャストを演じている時期に俳優引退を見据えている人はレアでしょう。
男役の鼓動が止まるまでの一刻一刻をいとおしむ時間に歌い、踊り、エスコートする「ブルースレクイエム」
彩風咲奈サヨナラショーで『BONNIE & CLYDE』は完結したんですね。