宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

銀橋こそ宝塚をタカラヅカたらしめる魔法の橋

もうすぐ宝塚大劇場で、花組公演が再開ですね。


歌劇団によると、再開に当たり、出演者と観客との距離を取るために演出の一部を変更。客席側に張り出した通路状の「銀橋」と呼ばれるステージの使用を取りやめるなどする。

むう、銀橋は使わないのか・・・残念ですが、安全第一。とにかくみんな元気で、千秋楽を迎えられますように。


で、「銀橋を使うなら、前から5列は売らないのかしら・・・」などととぶつぶつ言っていると、配偶者(宝塚への関心ゼロ)から


「そんな橋、よその劇場は無くても芝居をやっているんだから、採算を考えたら、客席販売数を減らすくらいなら、銀橋なんて使わない、一択だろう」


としれっと言われたりするわけですが、


銀橋って大事ですよね!



銀橋とは何かを考える

「銀橋」という名称は、フランス語で「銀の橋」を意味する「pont d argent」(ポン・ダルジョン)から取られたもので、1931年「ローズ・パリ」で演出家・白井鐡造が使ったのが初めてだと言われています。

銀橋 | 舞台・演劇用語 | シアターリーグ

へーっ戦前から、宝塚と言えば銀橋だったのですね。


宝塚ファンにとっては、オケボックスの向こうからスターが目の前に出てくると、やっぱり生理的にワクワクするものですし、


初日は路線が銀橋を渡るか、渡らないか、・・・あれ、途中まで渡って引き返した?


とTwitterが賑わうものですが、


他の劇場では(海外含む)常設の施設としては見たことがない、宝塚独特のものですよね。



・・・と思ったら、歌舞伎の花道があった。


歌舞伎における花道とは

歌舞伎における花道は、宝塚と違って客席を突っ切る通路のような構造をしています。

花道 は、 最初は「 舞台 への 通路」で、ただ歩い て くる だけ だっ た よう です が、 そのうち、 この 花道 でも 演技 を しよ う と なっ て いき、 歌舞伎 ならでは の 演劇 様式 が 確立 さ れ て いき ます。 


これ も ポスト モダン 風 に 言え ば、 舞台という虚構 空間と客席という 現実空間という、本来は異なる世界 を、花道は攪乱 し 混沌 とさ せ、 歌舞伎 を 世界 に 例 の ない 演劇 として 確立 し た、 とか なる わけ です。

中川右介. 歌舞伎一年生 ──チケットの買い方から観劇心得まで (ちくまプリマー新書) 


花道を銀橋に置き換えたら、


「舞台という虚構空間と客席という現実空間という、本来は異なる世界を、銀橋は攪乱し混沌とさせ、宝塚を世界に例のない演劇として確立した」


おお、みごとに置き換えできた。


銀橋の持つ「抽象性」

私が宝塚を好きな理由は、第一はもちろん性別を超越した「男役」(そして娘役だって生の女ではなく「虚構の女」ですが)の存在。


そして、


銀橋と、大階段という、前方と後方に広がる、舞台上の酒場とか宮殿といった「場」すら超えた、どこでもない抽象的な空間。


それは2階席から見ると、前方に弧を描く銀橋と、後方に広がる大階段が、まるで豪華客船の舳先がこちらに向かってくるような、とにかくでっかい、現実を超越した空間が現出するのにワクワクします。(外箱にはこれがないんだよなあ)


今後銀橋は使うのか、使わないのか?月組公演はいかに?




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