宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

アナスタシア大千秋楽 まかまどコンビラストディに寄せて


管理人は西日本在住で、宝塚のカレンダーは宝塚大劇場を標準時としているので、心はもうヴェローナに飛んでいるのですが、


気づいたら、もう東京宝塚劇場の大千秋楽!そして真風・星風ペアも一つの区切りとなるのですね。


この人事について、ファンの方の想いは様々でしょうが、個人的には、寂しさ3割、楽しみ7割。


2人とも退団ではなく、まだ宝塚に在団してくれる、というのもありますが、


自分が宝塚ファンになった頃は、宙組発足等に伴い、トップ娘役スライド人事が多発していた時期だったのもありますし、


社会人となり、数年ごとに人事異動を繰り返す身として、「まあ、宝塚も企業だし、ジェンヌさんも社員だしな」という思いもあります。


星風さんの、柚香さんとの幸福感溢れそうなカップルも楽しみですし、


潤花さんと組むことで、真風氏のアダルトでダンディな芝居も見たい。潤花が「ホームズを出し抜いた女」アイリーン・アドラーかあ…確かに潤花ちゃん、ファンの予想を出し抜いたもんね(←おいおい)





星風さんへ。アナスタシア第一幕のあの衣装を着たあなたを見ると、なぜか土偶を連想します(笑)服の色のことではないですよ。古代人が土偶に込めた、豊饒への祈りを想うのです。


たおやかに見えて、実は女版真風氏(?)のように、嵐の中の灯台のように、ゆるぎなくどっしりとしているあなた。


「アナスタシア」とは「再生」、「ディミトリ」とは古典ギリシア語で「母なる大地」を意味する「デメテル」に由来するそうですが、


アナスタシアを演じるあなたは、ロシアの大地母神のようでした。例のシーンを描いた絵があって、キャプションに「ディミトリとロシアの地母神との聖なる結婚」というキャプションがあっても驚かないでしょう。



以下は、以前書きかけて、怒涛の人事発表で発表の機会を逃していたアナスタシア観劇雑記です。せっかくですのでこの機会に。

グレヴのキャラが迷走している問題



TAKARAZUKA REVUE official promotional video "ANASTASIA THE MUSICAL"


英語字幕がつくようになったのですねえ。海外の方で、この動画をきっかけに宝塚を知って、ロックダウン中、配信で楽しんでいらっしゃる方もいらっしゃるのかなあ。


本ブログも、海外在住の方にもお読みいただいているようです。本当にありがとうございます。


「アナスタシア」クリエイティブスタッフによる解説動画

ミュージカル『アナスタシア』メイキング<ストーリー>


グレブは「ソ連当局側の立場」を1人のキャラに集約して擬人化しているようなところがあって、個性を持つ1個人というには、混乱した存在なんですよね。


そもそも土台になったアニメ映画版では、グレヴはいなくて、なんと魔法使いラスプーチンが生き延びていて、パリに連絡役のコウモリを派遣してアーニャを見張らせている、といういかにも子供向けな展開だったのですよ。


20世紀のころは、資本主義陣営に属するアメリカのハリウッド映画に出てくるナチスや共産主義は、冷徹非道な敵役がお約束。


なのにグレヴは、基本物腰柔らかで、サンクトペテルブルグの指令部に呼び出されて怯えているアーニャにギャグをかましてスルーされる(あのシーン、面白いけど、キャラが混乱する原因になっていると思う)


ソ連(ロシア)に対するイメージは時代により、世代によりいろいろでしょうが、


ブロードウェイの演出家のダルコ・トレズニャックは、セルビア出身(今はロサンゼルス・オペラの演出家)で、リアル共産主義下の空気も、現代のアメリカのソ連(ロシア)観も知っている方。


ダルコ・トレズニャックは、アメリカの、もうソ連のことを教科書でしか知らない若い世代のミュージカルファン向けに、20世紀の資本主義側の反共プロパガンダの類型をそのまんま再現したくない、と思ったのかもしれません。


戦争もの映画やTVに出てくる軍人は、主役俳優が演じる一兵卒には、ものすごく厳しい態度で接する描写が多いですよね(まあ、戦場だし)


私の祖母は戦時中、学徒動員で陸軍の司令部で働いていたのですが、司令部では将校さんなどお偉いさんのほうが、動員の女学生に対して物腰柔らかで、末端にいくほど横柄だった、とか聞いていたので、


個人的に、グレヴは「若くしてサンクトペテルブルグのナンバー2までなったエリート」という設定なので、アーニャに物腰柔らかで気さくな態度であること自体に違和感はありませんでした。


(そんなスピード出世の背景の一つに、本人の資質+革命(皇族暗殺)の立役者であった、人民の英雄であるはずの父親の存在もあると思う。)


アナーキスト(無政府主義者、つまりルイジ・ルキーニ)として強制収容所で死んだ父を、迷うことなく敬愛し続けるディミトリとの対比で興味深い人物像だと思うので、もし再演されるなら、物語への関わり方にもう一工夫あれば、と思います。






宙組 東京宝塚劇場公演 『アナスタシア』千秋楽 LIVE配信