宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

鳳月杏はいつ運命の女神の後ろ髪を掴んだのか



鳳月杏、天紫珠李、ついでに大谷翔平も、みんなまとめて、おめでとうございます!


鳳梨酥(パイナップルケーキ)でお祝いだ!



鳳月杏は、プラチナのような男役だと思います。


プラチナは化学的に非常に安定であるため、装飾品に多く利用され輝きを放つ一方、触媒としても自動車の排気ガスの浄化をはじめ多方面で使用されています。


鳳月杏さんは2006年3月に初舞台の92期。月組に配属され、2013年「ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-」新人公演で研7でアンドレ役。


2014年に花組へ組替え。これは94期の珠城りょうを研9でトップにするために、上級生の鳳月を花組に逃がした、というところなのでしょうが、


花組ではたしかな受けの演技で、舞台の触媒役として、自ら輝きながら花男たちの芝居をおおいに活性化させていました。


『はいからさんが通る』(ドラマシティ・日本青年館) - 青江冬星
『ポーの一族』 - ジャン・クリフォード
『あかねさす紫の花』 中大兄皇子


など、印象的な役どころを次々に演じ、人気を高めていきました。


ちょうどこの頃、宝塚はコロナ禍前の絶好調期で、ライブビューイングが本格化し、舞台のチケットが手に入らなかった層にもPRできたのではないでしょうか。


2019年に月組に組替え。


2020年2月、『出島小宇宙戦争』(ドラマシティ・東京建物 Brillia HALL) - カゲヤス 東上初主演


月組に戻った後も、2021年『川霧の橋』の半次などが印象的でした。



まだこの頃は、演目発表のたびごとにSNSで「もしや、餞別?」とざわざわしていたのを覚えています。


劇団も本人も、研19でのトップ就任はよもや想定していなかったのでは?



個人的には、「宝塚の路線男役」としての当たり役を出せる「金の時代」は、研12~研16くらい、


それを過ぎると、いわゆる「銀の時代」としての輝きを放つ時期だと思っています。


まだトップに就任していない95期の2番手が待機しておりますが、


コロナ禍が無ければ、学年的な目安で言えば、96期~98期あたりが「トップ就任適齢期」の頃合いだったのでしょう。


もしも、


96期から和希そら、紫藤りゅう


97期から綺城ひか理


98期から飛龍つかさ、綾凰華、天華えま、瑠風輝


彼らは2020年~2022年頃にかけて、コロナ禍でファンとの交流の場が閉ざされ、どうにももどかしい時期を過ごすことを余儀なくされてしまった。


この時期に、だれかもう一人でも抜け出していたら、正直、鳳月杏の研19トップ就任は無かったと思います。


運命の女神の前髪を掴んだというよりは、後ろ髪を引かれつついったん通り過ぎた女神を振り向かせて掴んだトップの座。


お披露目は『Guys & Dolls』でよろしくお願いいたします。

そう、あの人は「休演中」ではない



宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員の女性(25)が昨年9月に死亡した問題で、27日に遺族の代理人弁護士が開いた会見のなかで、亡くなった女性の妹による声明が読み上げられました。



亡くなった女性の妹さんが、今になってこのようなコメントを発表されるということの重さに胸が塞ぎます。


2023年9月30日(土)、宙組公演『PAGAD(パガド)』『Sky Fantasy!』はいつものように幕をあけました。


当日、あるジェンヌが2023年9月30日(土)の公演を「休演」すると発表されました。観劇に来たファンは、あら、ケガをされたのか、体調を崩されたのか?お大事に、と思いながら、観劇したのでしょう。


その日の公演が終演したのち、衝撃的な報道が駆け巡りました。


「あの日」以来、『PAGAD(パガド)』『Sky Fantasy!』の大千秋楽である2023年12月24日(日)を過ぎてなお、公式には「あのジェンヌ」は「休演中」のまま。


「あのジェンヌ」は、本当は体調を崩している訳でも、入院している訳でもない。


ある程度のファンならみんな知っていて、でも公式に「あのジェンヌ」の名前を出して追悼できないまま、もう半年が過ぎようとしている。


亡くなったジェンヌの芸名が、今に至るまで公表されないのは、「ご遺族の要望」への誠実な対応なのだろうと考えておりました。


今になって思えば、劇団は2023年9月30日(土)の午前11時の時点で、尋常でない事態が起きていることは把握していたのではないかと思います。


翌10月1日(日)以降、宙組公演の休演に際して、劇団は宙組所属のジェンヌが亡くなったという重大で動かしがたい事実について公表し、故人の死を悼む文章を掲載する配慮はあってしかるべきだった、と今でも思っています。

宙組のことを、ただ祈る



紅子:お久しぶり。何してたの?


管理人:地元のお寺の「はだか祭り」の手伝いをしていました。


紅子:え、最近ニュースで「はだか祭りに女性が参加」で話題になっていた、アレ、あんたの地元だったの?


あんた、女性だったよね?まさか、あの奇祭に、晒し巻いて参加したの!


管理人:ニュースになったのは、愛知県稲沢市の「国府宮はだか祭」ね。


ふんどし一丁の男達がもみ合う祭りは「天下の奇祭」と呼ばれているけれど、似たような祭りは、実は全国にあってね。




地元のお寺で「はだか祭り」が23年ぶりに復活したのよ。


紅子:で、女性がおとこ祭りに?


管理人:「はだか祭り」とは、へんな意味はなくて、仏の前に自分を偽らず、ありのままを差し出し、自分と対峙する機会なんですって。


祭を見ながら、私も、いろいろ考える機会になったわ。宝塚のこともね。


宙組でこの半年の間にあったこと、感じたこと、SNSに書いてきたこと…自分は仏の前で胸を張れるのかな、とかね。


紅子:そういえば、最近も報道があったね。


管理人:「宙組公演再開のため、○○さんを○させろ」


「今になって認めるなら、最初から認めておけばよかったのに」


「話し合いのプロセス」を10倍速ですっ飛ばして、結論だけを求めるような論調にどうにも心が疲れてしまってね。


祭に参加して、ちょっと心を落ちつけて考えるいい機会になったわ。


紅子:そう言いながら、女性参加OKの餅まきでは、ずいぶんハッスルしていたね。



ホラ話と思いきや、意味深『エンジェリックライ』



ファンタジー・ホラロマン

『エンジェリックライ』

作・演出/谷 貴矢


天界一の大ホラ吹き、天使アザゼル。


類まれなる美貌と聡明さを持つ彼だったが、その大変なる素行の悪さから、ついに天帝の怒りを買ってしまう。


アザゼルは一切の能力を封じられ、修行と称して人間界へと堕とされてしまうのだった。


天界へと帰る方法を模索するアザゼルだったが、天使としての能力と共に、なんと嘘をつく能力も封印されてしまっていた。


人々に真実の素性を語るも、あまりの荒唐無稽さに相手にされず、ホラ吹き呼ばわりされてしまうアザゼル。


途方に暮れ、飲んだくれる彼の話に、唯一真剣に耳を傾ける女性がいた。


彼女はエレナと名乗り、トレジャーハンターだという。


エレナは、どんな天使や悪魔をも従えることができる、と言い伝えられる秘宝「ソロモンの指輪」を狙っていた。


長らく人類史から紛失していたが、最近フェデリコという大富豪が入手した指輪が、それに違いないという。


盗み出すために協力者を探していたが、その荒唐無稽さゆえ、エレナも誰にも相手にされずにいた。


指輪の力を使えば、自分も天界へ帰れるかもしれない、と協力を申し出るアザゼル。


二人は共闘を誓い、フェデリコから指輪を騙し取る策を練り始めるのだった。


その頃、フェデリコの元に別の怪しい影が忍び寄っていた。指輪の力を得んと欲する悪魔、フラウロスである。


一方、その動きを察知した天界も、大天使ラファエルを人間界に派遣し、事態は混迷を極めていく。


だがフェデリコには、それらを跳ね除ける強い野望があった・・・。


果たしてアザゼルは、人間、天使、悪魔が入り乱れる騙し合いに勝利し、力を取り戻して天界へと帰ることができるのか。


壮麗なる虚構で送る、ファンタジー・ホラロマン。


紅子:”壮麗なる虚構で送る、ファンタジー・ホラロマン”


礼真琴の別箱も、ホラ話ばっかりするホラロマン・ファンタジーでしたね。


管理人:谷貴矢先生は、いつも真面目な目をして「デジタル・マジカル・ミュージカル 出島」とかホラ話をする人です。


紅子:ホラ話と思って油断していたら、目が紙の裏まで照らすような光を放っている怜悧な人です。



管理人:”アザゼル”は旧約聖書「正典」に名前は出てきますが、どんなキャラなのかは描写がありません。


神の教えを伝える諸文書のうち、旧約聖書の正典に含まれない「偽典」、つまり異端とされた「エノク書」という文書によると、


アザゼルという名前の天使は、人間の娘を愛して地上に降り、妻とし、子をなす。


アザゼルは、人間の男に戦いの技術を、女には身を美しく装う術を伝える。


その後人間達は、男達は強さを、女たちは美しさを競って争い、人間と堕天使の間に生まれた子供たちは途方もなく巨人化して、地上は大混乱になる。


神は怒り、地上に大洪水を起こしてしまう...



紅子:今はじめてそんな話を聞いたわ。


管理人:まあ、異端とされた話ですからね。


で、このアザゼルさんが、みんなが知ってるあの言葉と関係があるのですって。




荒野の悪霊アザゼルのために選ばれたヤギに,民衆のすべての罪を背負わせて荒野に送る。


このヤギを〈贖罪のヤギ(スケープゴート)〉と呼ぶ。


なお,身代りのヤギ,つまりスケープゴートということばは,旧約時代,人々が自分たちの罪を1頭のヤギになすりつけ,荒野に放って死に至らしめた儀式に基づくといわれる。


この表現からわかるように,社会内的汚れをヤギに転移させ,それを野に放つことで汚れをはらう儀礼が,地中海世界にはあった。…



紅子:”人々に真実の素性を語るも、あまりの荒唐無稽さに相手にされず、ホラ吹き呼ばわりされてしまうアザゼル”


スケープゴートにすべての罪をなすりつけて、追放...


管理人:なんか今のご時世、意味深よね…

『LUPIN~』配信感想 真風涼帆あっさり女に



土曜日は遠征して花組『アルカンシェル』を観劇、日曜日は配信でミュージカル版『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』を視聴と、小池修一郎ワールドに浸っておりました。



ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』プロモーション映像


配信日のキャストは、若き日のアルセーヌ・ルパンは古川雄大、ルパンに至高の快楽と地獄を教えてあげる120歳の美魔女カリオストロ伯爵夫人に真風涼帆。


『アルカンシェル』は、90分で済む話を2時間10分に引き延ばした感がありましたが、


『LUPIN』は真風が男装して真彩希帆をさらって行ったり、ドレス姿の真風とホームズとの絡みなど、サービス場面はいろいろあるものの...


訳ありげな人物が次々出て来てくるが、肝心の物語の方向性がなかなか見えず、第2幕の半ばまでだいぶ冗長に感じました。


モーリス・ルブランの原作のうち、本作のベースとなる「七本枝の燭台 」の謎や、ルパンの最初の妻となるクラリス(真彩)や敵役ボーマニャン(立石俊樹木)のキャラは『カリオストロ伯爵夫人』から、


コナンっぽい少年探偵(加藤清史郎)や、何しに来たのかよくわからないへっぽこホームズ(小西遼生)ネタは『奇巌城』から、


カリオストロ伯爵夫人の男装ネタは、潤花が演じていたアイリーン・アドラーの原作での特技から?


複数のそれぞれけっこうなボリュームがある原作から、いろいろネタを引っ張ってきているようですが、交通整理がうまくいかずにもたついていた印象です。


原作では、クラリスは赤ちゃんを産んだのち早世し、ルパンはカリオストロ伯爵夫人と因縁の再開を果たすので、ひょっとしたら続編があるかもしれません(カーテンコールで古川さんがちょっと匂わせ発言をしていました。)


カリオストロ伯爵夫人の真風涼帆は、声はまだだいぶ低いのですが、タキシードでもドレス姿でも仕草が優雅で、彼女が長い腕をくねらせるたびに画面越しに香水の匂いがふわぁと漂う、艶やかな姉御っぷり。


「ルパン一世」に対する「初代・峰不二子」感があってよかったです。


本格ミュージカル路線は厳しいでしょうが、舞台界に清純派は多いけれど、クラシカルなファム・ファタール系の色香漂う女優は今や希少なのでは?


翻訳舞台、例えばアガサクリスティーもの舞台で犯人役の曲者マダム系など、需要があるのでは?と思いました(贔屓目かもしれない自覚はあります。)