宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『Golden Dead Schiele』正直感想



「角を矯めて牛を殺す」妙にキラキラにしたせいで死んじゃったシーレ


『Golden Dead Schiele』の配信を視聴しました。



エゴン・シーレ略歴


ヒットラーが入りたくてたまらなかったウィーン美術アカデミーにすんなり合格、あっさり退学。


「俺は自分の描きたい絵を描くんだ!」とプライドが高く、衝突が絶えなかったが


シーレ「僕には、才能がありますか?」


クリムト:「君には、才能がありすぎる」


と評価され、支援を受ける。


クリムトに「ハチミツ色の金髪と青い目をもつ」17歳の少女ヴァリ・ノイツィルを紹介され、同棲を始める。


展覧会にエロティックな絵画を出品しては非難され、


家出少女を家に宿泊させたことがきっかけでトラブルになり、「猥褻(わいせつ)画の頒布」の罪で絵を燃やされ、投獄される。



献身的に尽くしてくれたヴァリに


「経済的なメリットのために、金持ちの娘と結婚する。でも君との縁も切りたくないから、結婚後も夏のバカンスには不倫旅行に付き合って」


などとぬかし、ヴァリは愛想をつかして従軍看護師となる。


裕福な家庭出身のエーディトと結婚するも、新婚3日めに招集される。


戦地から帰り、戦地で亡くなったヴァリ(乙女)と、彼女を「死」に追いやった自身をモデルにした作品「死と乙女」が評価を得る。


「俺の人生の黄金期は、これからだ!」と思った矢先、


スペイン風邪により、妻が死去。自身も妻の死の3日後に死ぬ。


・・・



管理人:個人的には、生で見て衝撃を受けた作家さんなんだけどね。


モデルの皮膚の下にある、見えない何かを描けるのが、天才たるゆえんなんだろうな。


クリムトのヌードの皮膚には、女の血潮の温度を感じる。


エゴン・シーレのヌードの皮膚には、女の神経を感じる。モデルの神経を流れる、ヒリヒリとした痛みを見る者にも追体験させる。


彩海せらの、目の周りの筋肉のこわばらせかたが、有名な自画像そっくり!




紅子:モラハラくそ野郎を、ポエムで弁護するんじゃないよ!


管理人:芸術だから!ゲージュツ!


紅子:ゲージュツなら、何してもいいの?


エゴン・シーレに、もうムカついてしょうがない。このゲスの極み青年!


管理人:まあ、シーレの作品が、「彼にしか描けない絵を描いた」として評価される理由は、


「女体のヌードを描くときは、「古代ギリシャの女神像」を描いた、偉大な芸術でなくてはなりません」


「芸術か、エロか」


「これはエロではありません。芸術です」


「これはエロティックですが、ポルノグラフィティではありません。エロティック・アートというアート…」


「エロい絵を描いて公表することはモデルへの性加害です!作品の撤去を!」



うんぬんと論議をふっかけてくる世間やら警察やら裁判官やらに


うっせえ、うっせえ、うっせえわ


俺は、目の前の女への欲情こそを描きたいんだよ!


血走った眼の何が悪い!



と、100年たっても喧嘩をふっかけ続けてくるところがあるからだと思うのね。


紅子:宝塚の舞台で、シーレのやばいところや、ゲスいところを微妙に漂白して、



【死と乙女】恋人たちの別れの悲劇…ではない!?エゴン・シーレ衝撃の畜生エピソード大爆発【戦前の分裂と崩壊への不安感】


シーレ:俺が描きたかったのは、「死」と「乙女」です。


ー幕ー


…もう一押ししてほしかったなあ。


「「死」と「乙女」は、美術館の絵のタイトルに書いてたから知ってる」


と思っちゃうのよね。


管理人:エゴン・シーレを題材にして、「綺麗な悲劇」にしているんだけど、ちょっと雰囲気で押し切られちゃったかなあ。


大戦で崩壊寸前のハプスブルク帝国への不安感とか、もう2歩くらい踏み込んで欲しかった気もするけど。


紅子:「死」のダンサーも、宝塚では見飽きちゃった演出だしね。


管理人:受験同期のヒットラーを出すわけにもいかないだろうし、難しい。

礼真琴『BIG FISH』に舞空瞳が出ない理由




まるでお伽噺のように自らの人生を語り、周囲を魅了するエドワード・ブルーム。


未来を見通す魔女や、共に旅に出た巨人の話、サーカスでの最愛の妻サンドラとの出会い等、彼の奇想天外な話は幼い息子ウィルを虜にしていた。


しかし、大人になるにつれ全ては作り話に過ぎないと考えるようになったウィルから、エドワードは距離を置かれるようになってしまう。


ある時、病に倒れた彼の元へ久々にウィルが帰ってくる。


父の人生が本当はどういうものだったのかを知りたいと考えたウィルがその足跡を辿り始めると、次第にエドワードの真実の姿が明らかになっていき…。






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ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』2019 プロモーション映像


礼真琴主演ミュージカル『BIG FISH』に舞空瞳が出演しないことで、SNSでいろいろと言われているようですね。


個人的には、星組のトップコンビの退団時期とか人間関係がどうこうというより、『BIG FISH』という物語は「父エドワードと子ウィルの和解」をテーマにしたお話なので、トップ娘役は出演せず別行動なのかな、と思っています。




「おとうさんはね、5メートルの大男と戦ったことがあるんだ」


3歳の息子に語るなら「いいお父さん」なんだけど…


はたちを過ぎた息子の結婚式のスピーチで「自分が巨大な魚を釣った話」を延々と繰り広げる親父ってどうなのでしょう。


(英語で「a fish story」は「大げさな話」や「ホラ話」「大うそ」という意味があるそうです)


とうとう息子から


「父さん、今日の主役はオレだから!」


とケンカになって、距離を置かれてしまう。



数年後、息子の元に母親から「おとうさんが病気で...」と連絡があり、駆け付けてきたのに、おやじは相変わらずほら話ばかり。


父の人生は本当はどういうものだったのか?調べていくと、ほら話と思っていたエピソードには意外な真実が…



というタイプのお話で、女性キャストは「父の過去の恋人(息子の母)」や「息子の妊娠中の妻」といった立ち位置です。


ブロードウェイミュージカルの版権元との交渉上「正規ヒロイン」は置かないことになったのでは?

宝塚も他人事でない...TVドラマ原作者の悲劇に




ドラマ脚本巡るトラブルとは…「セクシー田中さん」原作者急死 日本テレビに原作者の意向伝わっていないとの話も



管理人は、日本テレビで2023年10月から12月に放送した「セクシー田中さん」というTVドラマを拝見しておりました。


原作は未読(原作があることもあまり認識せず)視聴しておりましたが、


会社で経理担当として働きながら、ベリーダンスに生きがいを見出すアラフォーの「田中さん」(木南晴夏)と、同じ会社で働く婚活に余念がない20代前半の倉橋朱里(生見愛瑠)を軸にした恋愛模様を描くラブコメとして、日曜日の夜10時半に、息子の月曜セットのチェックなどをしながら気軽に見ていた記憶があります。


全10話の放送で、ラストの展開が登場人物の心情説明のシーンが増えてスタジオ演劇みたいになってきたり、


いきなり海外に留学して「それから2年後...」のシーンになって、キャラたちの関係性の決着はつかないまま


「私たちの人生はこれからも続いていくのです」


とうやむやに終わって、なんだか途中打ち切り?お正月にラスト特番があるの?と、ちょっともやもやしたことを覚えています。


TVドラマ放送の終了後に、原作者で漫画家の芦原妃名子さんが、ドラマ制作側と原作者との間で交わされた「原作のストーリーやキャラを改変しない」などと約束した内容が守られず、全10話のうち、9話と10話の脚本を自ら書くことになった経緯を説明するなど、


「なんだか揉めているなあ。昔からよくある話だなあ」


と思っていたら、原作者急死という悲しい事態となってしまいました。



外野には、原作者と日本テレビの制作陣で交わされた契約書の内容はわかりません。


原作者と日本テレビ側が「原作を改変しない」という契約を交わしていながら、制作陣が「TVドラマ化の権利さえ手に入れればこっちのもの。」とばかりに、原作者の意向を無視する改変を押し切るようなことがあったなら、大変な問題だと思います。


そのこととはまた別の話で、TVドラマ「セクシー田中さん」で漫画原作者が書いた9話と10話を拝見すると、


画とコマ割りで心理の綾を書く漫画の面白さと、生身の人間の(セリフも含めた)行動で語るTVドラマのシナリオの面白さは、また別物なのだなあ、とも思いました。


優れた漫画の画はセリフよりも雄弁で、生身の人間はセリフ+動いてなんぼ。


「漫画原作の良さを映像メディアで伝える」ためには、「原作を改変しないために改変する」緻密な打ち合わせが必要なのだと思います。それがプロデューサーの役目でしょう。


オリジナル作品を書ける演出家不足が深刻で、原作つき作品だらけの宝塚歌劇団も、まったく他人事ではないこの事件。


宝塚で「ここまで原作を改変するなら、この原作を選んだ意味はあるのか?」レベルの改変は、さすがに原作者が故人である場合が多いですが、原作者が御存命の作品で、劇団が不義理をしていないか、いろいろ不安になってきました。

『G.O.A.T』月ノ塚音楽学校オンライン受講の感想


『G.O.A.T』月ノ塚音楽学校の月城先生の授業を、オンライン受講いたしました。



月城かなとは、トップ時代に世の中を斜めから見ていたり、ひねくれていたり、堅物キャラだったりを演じる事が多かったので、


”いかにも”なカタコト日本語の外国人教師役のコメディを、のびのび演じているのを見られて嬉しかったです。


軽く演じているようで、間の取り方など、M-1グランプリばりに緻密に計算されていて唸りました。



宝塚の通常のショーでは、曲の1番を歌ったら捌けて、下級生が繋ぎで別の曲を歌っている間に早着替えして出てきて次のシーンに移って、という構成が多いですが


『G.O.A.T』は、1曲1曲を長く取って下級生に見せ場を作り、月城らによるアコースティックコーナーなど、歌とダンスの「芸」をたっぷりみせる作りで見ごたえがありました。


宝塚で「ミュージカルスター」といえば、望海風斗や礼真琴だと思いますが、月城かなとは「歌役者」として立派なものだと思います。


望海や礼は「直木賞作家」系の歌唱で、楽曲の音程やリズムが難しい歌を歌う時に真価を発揮し、


月城は「芥川賞作家」系の歌唱で、歌詞の文学性が高い曲を歌う時に真価を発揮する。




「キッチュ!」を歌うのを聞くと、東宝版寄りの、エリザベートが悲劇の皇妃というより、市民が貧困にあえぐのをよそにミルク風呂にはいって美女の写真とにらめっこしている「やな女」っぷりにムカついてしょうがない(笑)


スピッツの「空も飛べるはず」。この曲は発表当時、TVドラマの主題歌として大ヒットした有名な曲で、カラオケでも「歌いやすい」曲ですが、この「歌詞」を聞き手に届けるのは実はとても難しいと思うのです。


幼い微熱を下げられないまま  神様の影を恐れて

隠したナイフが似合わない僕を  おどけた歌でなぐさめた


サナトリウム、白衣、看護師、老人...

スピッツ / 空も飛べるはず


しょっぱなから「幼い微熱」に「神様の影」ですよ。


私はこの曲がリアルタイムでヒットしていた時から知っていますが、30年経ってもまだ意味がわかりません。


「子どもが熱を出したので、会社を早引けしまーす」というニュアンスの「微熱」ではないっぽいですよ。


もしも入試で「この歌詞は何を意味しているのか答えよ」と問われたら、開成中学の受験生でもちょっと困るのではないでしょうか。東大の受験生なら簡単なのか?


管理人は月城かなとが歌う「空も飛べるはず」を聴いて、「性」と「死」に目覚めだした時の、羞恥心や親への後ろめたさといった思春期の疼きを思い出しました。


宝塚で、聞き手にこれだけ「歌詞の解釈」について考えさせる歌い手も少ないのではないでしょうか。


「銀の龍の背に乗って」では、あの隆起して蒼ざめた能登の海岸が、痛んでいる人のもとへ向かうヘッドライト・テールライトが見える。



銀の龍の背に乗って



宝塚のコンサートを見ていて、林修先生の国語の授業を受けているような「なるほど」がある歌唱に感嘆いたしました。

宝塚はパワハラを認めたの?認めてないの?



宝塚歌劇団の俳優が急死した問題で、親会社の阪急阪神ホールディングス側が劇団関係者らのパワハラなどがあったことを認め、遺族側へ謝罪する意向を固めた、という報道がありました。


その後劇団の公式ニュースでは「現時点で決まったものはなく、公表できる事実はございません」とのメッセージが出ました。




このたびの宝塚歌劇団宙組生の急逝を受け、ご遺族の皆様には心よりお詫び申し上げます。


本日、当方代理人を通じて、今回の件に関するご遺族代理人との三回目のお話し合いをさせていただきました。なお、お話し合いの内容について一部報道がなされておりますが、現時点で決まったものはなく、公表できる事実はございません。引き続き誠実に協議してまいります。





昨年9月に宝塚歌劇団の25歳宙組団員が急死した問題で、親会社の阪急阪神ホールディングス側が劇団関係者らのパワハラなどがあったことを認め、遺族側へ謝罪する意向を固めたと報じられてから一夜明けた25日、阪急電鉄の広報担当者は困惑を隠せなかった。


同担当者は「3回目の面談があったことは事実ですが、決まったことは何もなく、公表できるようなことはございません」と語るにとどまった。


うーむ。この報道と劇団メッセージの齟齬は何なのでしょうか。


「一部報道」の取材源は、親会社の阪急阪神ホールディングス側でしょうか、ご遺族代理人側でしょうか。


仮説1:劇団がパワハラを認め遺族側へ謝罪する方向性は決まったが、現時点では謝罪の日時など詳細は固まっていないので公表できない。


仮説2:劇団はパワハラを認めていないが、遺族側弁護士が一定の要求の実現を劇団に働きかけるため、広く一般大衆にアピールしてその支持を得ようとする意図でマスコミに情報を流した。


現状は「話し合い」の段階ですが、「法廷」ではなくても、双方が有能な代理人を立てて「戦術」を駆使する世界です。


社会的な注目を集めている事件ですので、仮説2の、ご遺族代理人が、調査報告書を読んでいない大衆の、事実の存否に対する内心の判断に訴えるという「戦術」を使うことはありえるかもしれません。


仮説1のパターンで、非公開で遺族へ謝罪し、宙組公演の再開の道が開く可能性もあり、仮説2とすれば交渉が決裂して裁判となり、宙組公演は数年にわたりストップする可能性もあります。


個人的には『FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16)』を、ゲームファンとして楽しみにしているのですが...