宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

宝塚はパワハラを認めたの?認めてないの?



宝塚歌劇団の俳優が急死した問題で、親会社の阪急阪神ホールディングス側が劇団関係者らのパワハラなどがあったことを認め、遺族側へ謝罪する意向を固めた、という報道がありました。


その後劇団の公式ニュースでは「現時点で決まったものはなく、公表できる事実はございません」とのメッセージが出ました。




このたびの宝塚歌劇団宙組生の急逝を受け、ご遺族の皆様には心よりお詫び申し上げます。


本日、当方代理人を通じて、今回の件に関するご遺族代理人との三回目のお話し合いをさせていただきました。なお、お話し合いの内容について一部報道がなされておりますが、現時点で決まったものはなく、公表できる事実はございません。引き続き誠実に協議してまいります。





昨年9月に宝塚歌劇団の25歳宙組団員が急死した問題で、親会社の阪急阪神ホールディングス側が劇団関係者らのパワハラなどがあったことを認め、遺族側へ謝罪する意向を固めたと報じられてから一夜明けた25日、阪急電鉄の広報担当者は困惑を隠せなかった。


同担当者は「3回目の面談があったことは事実ですが、決まったことは何もなく、公表できるようなことはございません」と語るにとどまった。


うーむ。この報道と劇団メッセージの齟齬は何なのでしょうか。


「一部報道」の取材源は、親会社の阪急阪神ホールディングス側でしょうか、ご遺族代理人側でしょうか。


仮説1:劇団がパワハラを認め遺族側へ謝罪する方向性は決まったが、現時点では謝罪の日時など詳細は固まっていないので公表できない。


仮説2:劇団はパワハラを認めていないが、遺族側弁護士が一定の要求の実現を劇団に働きかけるため、広く一般大衆にアピールしてその支持を得ようとする意図でマスコミに情報を流した。


現状は「話し合い」の段階ですが、「法廷」ではなくても、双方が有能な代理人を立てて「戦術」を駆使する世界です。


社会的な注目を集めている事件ですので、仮説2の、ご遺族代理人が、調査報告書を読んでいない大衆の、事実の存否に対する内心の判断に訴えるという「戦術」を使うことはありえるかもしれません。


仮説1のパターンで、非公開で遺族へ謝罪し、宙組公演の再開の道が開く可能性もあり、仮説2とすれば交渉が決裂して裁判となり、宙組公演は数年にわたりストップする可能性もあります。


個人的には『FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16)』を、ゲームファンとして楽しみにしているのですが...

ボイルド・ドイル~新人公演感想



『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』
-Boiled Doyle on the Toil Trail-


の新人公演を拝見しました。




新人公演で主役のアーサー・コナン・ドイルを演じた華世京は、謎タイトル


ーBoiled Doyle on the Toil Trailー


を翻訳するような演技でしたね。


ドイルさんは、スポーツ万能、頭脳明晰で、医師免許を取って開業しても、金にならない。


金のために書き飛ばしたホームズが大ヒットしても、自分が書きたくてたまらなかった歴史小説は評価されない。


バラバラになった家族を呼び戻すこともかなわない。


天からもらった才能を、何に使うか。


ドイルは、


文才は、偉大な人物が、偉大な業績を成す、偉大な物語を書くためにあるべきだ。


ぶっとんだ探偵が、ぶっとんだ事件を、ぶっとんだ推理で解決するぶっとんだ話の、どこが偉大なのだ。


と思っていた。


脳みそが煮え煮えなドイルさんが、骨の折れる世渡りの道を歩いた先に、


自らの分身であるシャーロック・ホームズとの「対峙」


自分と最も近い他人である妻ルイーザからの「自己への肯定」


を通じて、


エンタメ交霊術師ミロ・デ・メイヤー教授のペン=自分の「エンタメ作家としての才能」


を受け入れる。


ドイルはペン1本で、犯罪だらけで流血の絶えない陰惨なロンドンを、名探偵の活躍に胸おどるエンターテインメントの舞台に変えることができる。


『ストランド・マガジン』の発売日に書店に詰めかけたロンドンっ子が感じたのと同じワクワクを、21世紀の小学校の図書室で味わわせることができる。


華世京は


「世の中に、物語は必要だ。」


という結末に至る心理の行程を誠実に演じていて、実によかったです。

不倫がなんだ『仮面のロマネスク』を見ろ



不倫がなんだ。


法院長夫人の悲劇は、あらゆる時代に存在しているじゃないか。


周囲の女性たちをチェスの駒のように鮮やかに盗っていくも、チェックメイト目前で破綻する美貌の青年貴族ヴァルモンも、


愛人に乙女を襲わせる、魔性の未亡人メルトゥイユ侯爵夫人も、


可憐なセシルも、アホのダンスニーも、21世紀の歌舞伎町にも、高松の古馬場にも、どこにでもいるじゃないか。


うちの会社の給湯室ですら、これっぽい話を聞いたことがあるぞ。


宝塚ファンはなあ、普段から今の地上波では放送できなそうな『仮面のロマネスク』みたいな作品を見て、「こんなお話、不道徳だわ!」と眉を顰めるどころか、ジェンヌの芸について真面目に語っているんだぞ。


中には「愛とは何か」「人間とは何か」と哲学しだすファンまでいるんだぞ。


文春よ、不倫ごときで宝塚ファンは驚かないからね!ふん!

「男役」は絶滅危惧種?玉三郎が語る女方論に思う



大阪松竹座で2024年1月3日(水)~14日(日)まで開催された「坂東玉三郎 初春お年玉公演」を鑑賞しました。



人間国宝による、女方の魅力解説、舞踊、琴の演奏、芝居の名場面再現と、映像も駆使して


「美味しいごちそうがちょっとずつ、ぎゅっと詰め込まれた豪華おせち料理」


のような舞台でした。



プログラム


・オープニング:映像による獅子舞


・口上~女方の魅力~


歌舞伎界に入ったきっかけや、養父守田勘彌 (14代目)、往年の大女優水谷八重子 (初代)らの思い出を語る。女方の踊りや所作について、手ぬぐいや扇を使っての実演解説も。



・舞踊:黒髪(くろかみ)


愛した男が恋敵と結婚し初枕を交わす夜、ひとり髪を梳きながら嫉妬と苦悩に苛まれる女の心情を踊る。



ー休憩ー



・舞台「天守物語」より


芝居の冒頭の場面を、記録映像と玉三郎の実演の融合で再現。


玉三郎は、最初は長年演じてきたヒロイン「冨姫」として出演。


いったん引っ込んで映像で繋いだ後、妹分の「亀姫」に扮し、スクリーンに映った「冨姫」とリアル「亀姫」が会話するという趣向。


※0:25~七之助「冨姫」玉三郎「亀姫」

【舞台映像】歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第三部 初日ダイジェスト映像


・玉三郎扮する亀姫様が、お琴の演奏を披露。


・亀姫様による、松竹座の歴史や舞台裏の解説映像。


・舞踊:由縁の月(ゆかりのつき)


※実際の舞台では、化粧、扮装つき

Tamasaburō's Summer, Jiuta Dances & Ghost Stories




最近、玉三郎は、歌舞伎の本興行の大きなお役は引退し、トーク&踊りの会など新しい試みに軸足を移すことを発表されました。


昨年12月の歌舞伎座では、当たり役の「天守物語」のヒロイン冨姫役を中村七之助さんに譲り、妹分の亀姫役を演じて、SNSの評判も良く、ぜひ見てみたかったのですが、お江戸は遠い。


まさか大阪で、噂の亀姫と、伝説の冨姫を両方見ることができるとは!


これまで玉三郎版「天守物語」を、生では一度、映像ではいくつかのバージョンを拝見しましたが、


玉三郎の「妖」に匹敵する「怪」を持つ女方は、ちょっといませんでした。「妖」対「美女」。


舞台の上で、映像の力を借りたとはいえ、玉三郎・冨姫の「妖」と、玉三郎・亀姫の「怪」が戯れている!


宝塚でいうと、「ポーの一族」で明日海りおがエドガーとアランの両方を、1人2役で演じるようなものですよ!


いやーっ、すごいお年玉でした。



前半のトークでは、初代水谷八重子 (1905年8月1日 - 1979年10月1日)の話が印象的でした。


日本の芸能の歴史上、女性が女性の役を演じるようになった歴史は、実は宝塚歌劇団の歴史とほとんど変わりません。


女優の歴史より、男性が女性の役を演じる「女方」の歴史のほうがずっと長かった。


女優・水谷八重子の芸能生活は、女性が「女方」と共演して、


「男の女方に負けない、「女」になるのだ!」


という試行錯誤から始まったそうです。


初代八重子は玉三郎に


「私の芸は女方の模倣から始まった。貴方は女方だから、女方の芸、女優の芸、どの型が良いか、自分で選んで」


と教えたそうです。



玉三郎は、


「近頃は、男らしさ、女らしさ、という考え方も難しくなってまいりました。」


「女形というものが、いつまであるのかわかりませんけれども。」


「私は緞帳のこちら側では、夢の女を演じさせていただきますから、お楽しみください。」



女方の人間国宝・玉三郎ですら、「女方」という存在が、100年後も商業演劇ベースで続いていくのは厳しいと感じているのかもしれません。


「女方」を「男役」に置き換えたら、宝塚歌劇団もまったく他人ごとではありません。


最近は「女優」表記が「俳優」表記に統一され、「男らしさ」「女らしさ」という言葉も「放送注意用語」となりつつあります。


緞帳の「あちら側」にいる、「らしさ」を極限まで追求した「夢の男」「夢の女」の魔法にかかる観客側の感覚・感性も、時代の感覚・感性に合わせて変化しています。


「らしさ」がポジティブな意味合いだった時代に築かれた「型」は、「らしさ」がネガティブな意味合いを持ち始めた時代に通用するのだろうか。


チケットWEB松竹を拝見するに、歌舞伎座の客入りも大変なようですし、宝塚歌劇団も、舵取りを間違えたら、120周年はともかく130周年記念式典は厳しいかもしれない。


気楽に楽しめて、ずっしりと重いお土産ももらったお年玉公演でした。

『Eternal Voice 消え残る想い』ポスター解読






ミュージカル・ロマン

『Eternal Voice 消え残る想い』

作・演出/正塚 晴彦   


ヴィクトリア女王統治下のイギリス。考古学に傾倒しているユリウスは、古美術商を営む叔父に頼まれ、アンティーク・ハンターとして各地を飛び回る生活を送っていた。


そんなある日、彼はメアリー・スチュアートの遺品とされる首飾りを手に入れる。


叔父は色めき立つが、その日からユリウスは原因不明の目眩や悪夢に悩まされるようになる。


あの首飾りは呪われているのではないか。


思いあまったユリウスは超常現象を研究する友人の元を訪れ、助手を務めるアデーラという女性に巡り会う。


アデーラはユリウスを一目見るや、全てを察したかのように彼の状態を言い当てる。


この二人の邂逅はまさに運命的なものであった。そして二人はやがて巻き起こる国を揺るがしかねない大事件へと誘われてゆく…。



管理人:『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』でコナン・ドイルが降霊術に参加していた頃のお話ですね。


紅子:ヴィクトリア女王統治下のイギリスは、産業や化学が急速に進歩した時代でしょ。サイエンスの時代に、本業は医者だったコナン・ドイルが降霊術にハマっていたのはなぜ?


管理人:ヴィクトリア時代の後期は、昔ならオカルト現象としか考えられなかった


「遠くにいる人と話す」


「目で見ている風景を、画家に頼まなくても絵に残せる」


「絵が動く」


といった魔術のようなことが、電信、写真、映画の発明で次々と具現化し、科学と魔術の境が不確かになった時期。



「電話で遠くの人と話せるなら、死んだ人とも話せるかも」


「目に見えない霊も、写真になら写るかも」


と真面目に考える人も多かったのかもね。





メアリー・スチュアートとは




映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』予告編



管理人:スコットランド女王(在位1542年―1567年)。エリザベス1世のいとこのスコットランド王ジェームズ5世の子。


生後1週間で即位。幼時よりフランス宮廷で育てられ,1558年フランス皇太子(後のフランソア2世)と結婚。


16歳でフランス王妃となるも、17歳で夫と死別。


スコットランドに帰国し再婚、息子を産むも、夫は暗殺される。


よりによって、夫を殺した容疑者と結婚したため、周囲の反感を買い、息子(ジェームズ六世)に譲位してイングランドに逃れる。当時25歳。


イングランド王位継承権をもっていたがゆえにエリザベス1世に19年間も幽閉され、陰謀荷担を理由に44歳で処刑された悲劇の女王。


紅子:2人とも、聖乃 あすかさんが演じていたバラ王子ヘンリー・テューダー(のちのヘンリー7世)の子孫なのね。


管理人:結局、メアリーを処刑したエリザベス1世の勝ち、なんだけど、エリザベス1世に子どもがいなかったため、イギリス王位は現在に至るまでメアリー・スチュアートの子孫たちが担っているの。


紅子:皮肉な運命ね…


管理人:メアリーはエリザベス1世への反逆罪で処刑されたんだけど、その反逆罪が本当に成立するものだったのかについても、現代に至るまで議論があるそうです。


彼女がイングランドで19年にわたって幽閉されていた時期に書いたとされる手紙は、まだ発見されていないか、すでに失われた可能性もある。


さらにその手紙は、21世紀のAIでも読み解けない複雑な暗号で書かれていて、2023年になってやっと解読されたものも50通以上あるそうです。






イスラエル在住でフランス人のコンピューター科学者であるジョージ・ラスリー氏、ドイツ人のオペラ教授であるノーバート・ビールマン氏、日本人の物理学者である友清理士氏の3人は、最近、メアリー・スチュアートが暗号で書いた50通以上の手紙を発見した。


使われていたのは彼女自身が考案した洗練された暗号で、文字数の合計は5万字にも上る。


3人の"探偵"は、コンピューターソフトウエアと伝統的な暗号解読技術を巧妙に組み合わせてメアリーの暗号文を解読し、彼女とその政治的環境について多くの新情報を明らかにすることに成功した。


紅子:じゃあ、呪いの首飾りには、メアリー・スチュアートの暗号解読のキーが隠されていて、欧州史の定説を覆す大発見につながるとか、


メアリーの子孫である、ヴィクトリア女王の秘密が明かされるとか...


管理人:なんか、そういう話、宝塚で最近見たような...


紅子:そもそも、マリー・アントワネットの首かざり事件の次は、「メアリー・スチュアートの首飾り」


管理人:『PAGAD(パガド)』とも被ってるわね。演出家同士、もうちょっと相談してから上演計画を立ててほしいわね。