宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

帆純まひろは惜しかった 花組退団者のお知らせに




下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。   


花組

舞月 なぎさ

柚香 光 -すでに発表済-

帆純 まひろ

星風 まどか -すでに発表済-

愛蘭 みこ

美里 玲菜


2024年5月26日(花組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団    



帆純まひろも退団するのですね…




96期~99期あたりは、95期神7に話題が集中しがちで、新人公演を卒業後はコロナ禍で露出が減り、お茶会というファン集めのツールまで奪われてしまった。


後輩にあたる100期以下は、新人公演やバウ公演まで配信されるようになって顔を売るようになった。


どうにも歯痒い状況が続く中、ついに帆純まひろ与えられた主演の機会が


バウ・ワークショップ『殉情(じゅんじょう)』


でした。


私は帆純まひろの芸風には、マゾヒズムというほどでもないのですが、「苦痛嗜愛(しあい)」の傾向があると思っています。彼女の顔が苦痛に歪むとき、私の心は同調して傷みつつ、ひそかに甘やかに疼く。


『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』 で、「青葉の笛」エピソードの 、追い詰められて、敵に


「お前のためには良い敵だ、名乗らずとも首を取って人に尋ねよ。すみやかに首を取れ」


と首を差し出した悲劇の武将・平敦盛役の、清らかに澄んで冷たい美しさは絶品でした。



帆純まひろが演じた佐助は、サディスティックな盲目の師匠春琴に献身的に仕え、春琴の容貌が激変した際には自らの眼を針で突いて、「ほら、私も見えなくなりました」と、師匠と同じ世界の住人となった人。


「猟奇的なレッスンを私にして」


的なお話で、現代のSNSで「いいね!」「わかる!」はまずつかなそうな行動をとるキャラです。


でも、帆純まひろの肉体から被虐によって漏れ出るエロスが、佐助の選択に「彼ならありえる」というリアリティを与えていたと思います。



和希 そらDS『Vie.』が今年のラスト公演で良かった



宝塚での「メリークリスマス」は、「戦場のメリークリスマス」のような状況になってしまいました。



有名なあの音楽は、実はとてもヘヴィなテーマの主題歌だった

映画『戦場のメリークリスマス』新予告



関西圏の宝塚ファンの中には、もう3か月以上、生の宝塚の舞台を見ていない方もたくさんいらっしゃるでしょう。


2023年最後の宝塚の公式活動となった和希 そらDS『Vie.』の配信視聴数は、相当なものになったのでは?


世間が「メリークリスマス」に沸き立つ中、あえて宝塚歌劇団に課金して「宝塚の今」に触れたいファンがいる。


和希 そらDS「『Vie.』の配信は、奇しくもいち路線ジェンヌの退団餞別DS」の枠を超えて、一連の報道に傷つき、飢えた宝塚ファンが、それでも宝塚に寄せる願い、祈りを受け止める機会となったのではないでしょうか。



和希 そらは、路線ジェンヌの中では歌唱とダンスの芸の確かさで礼真琴と双璧で、


礼真琴の芸風は「芸の神様に心身を捧げる儀式」を参列者として拝見するような荘厳さがあるのに対し、


和希 そらは、確かな技巧を駆使しながらも、肩の凝らない軽い歌唱&ダンスなのが良いですね。


前半のJーPOPクリスマスソングメドレーなど、他のジェンヌではクラシック志向のヅカ歌唱の重さが、JーPOPのはじける軽さの邪魔をしそうなところですが、和希 そらは楽曲に要求される”軽さ”をきちんと表現できる。


後半の宝塚メドレーでは、元のお芝居で2時間かけて醸成された想いを3分間で打ち明けるソングの熱量をきっちりこってり再現できる。


和希 そらの、高度なテクニックを駆使して「重さ」を感じさせない芸風を生かし切った野口 幸作氏の演出も冴えていたと思います。

東京の18時公演ばかり中止ではファン層先細りに



●宙組博多座公演(2月25日~3月3日)/梅田芸術劇場メインホール公演(3月16日~3月26日)、宙組宝塚バウホール公演(3月6日~3月17日)中止


●<花組東京宝塚劇場公演>

●初日を4月14日13時30分公演に変更します。

(4月13日15時30分公演を取りやめ、4月14日は2回公演から13時30分の1回公演に変更します)

●4月18日18時公演、5月2日18時公演、5月7日18時公演、5月14日18時公演を取りやめ、1回公演とします。

●4月25日は13時30分公演を取りやめ、新人公演のみの上演とします(新人公演の開演時間を15時30分に変更します)

●5月24日13時30分公演は取りやめ、同日は休演日といたします。


<宝塚歌劇110周年記念行事>

●「宝塚歌劇110周年記念式典」、「タカラヅカスペシャル2024」「宝塚歌劇110周年記念大運動会」中止。


宙組博多座公演と宙組バウホール公演の中止は、御遺族との話し合いの道筋が見えないままではお稽古の目途もたちませんし、やむを得ないのでしょう。


110周年記念式典やタカスペや大運動会も、稽古スケジュールもですが「とりあえず宙組以外の4組でお祝いしましょう」というものでもないのでしょうね。


100周年記念式典の頃は、「100周年の節目に立ち合えてラッキーだわ。150周年、200周年の頃にはどんな宝塚歌劇団になっているのかしら。」とロングスパンの未来を疑いもしなかった。


100周年の頃にはもう、110周年を目前にした2023年に起きた事件の芽は、あった。


今日このニュースを知った、まだ劇団に合格していない音校志望者は、劇団が120周年を祝えるならば、その頃のマス層になる。


劇団に「すぐに非の打ちどころのない満点回答を打ち出せ」とまでは申しません。110年続いたものを変えるのに、10年はかかるかもしれないと思って見守ります。



最近の公演スケジュールの見直しで気になるのは、東京宝塚劇場公演の18時公演の取りやめと、新人公演の15時30分スタートです。



最近、東京宝塚劇場の夜公演が18時30分スタートから18時に繰り上がり、昼間働いているファンにとって「終業後では開演に間に合わない!」問題が取りざたされていましたね。



夜公演の終演はどうしても21時を過ぎると、ジェンヌさんの中でも中卒で入団した研1の17歳のジェンヌが、22時までに帰れなければ、労働基準法に定める


「18歳未満の労働者の22時以降の労働禁止」


に抵触しますし、成人したジェンヌでも、22時以降の勤務には割増賃金を払わなければいけないでしょう。


「労働基準法」に抵触しないためには、夜公演の開催取りやめは合理的な判断なのでしょうが、


宝塚歌劇団が、若い勤労世代のファンを取り込めなければ、ファン層の高齢化とともに観客動員も衰微に向かってしまう。


働くファンが休日に宝塚歌劇団の観劇を楽しめて、リタイア層のファンは平日に観劇できるよう平準化するにはどうすればいいのか。


個人的には、働き方改革と公演の質の維持のため、チケット代は東宝ミュージカル並みに値上げしてかまわないと思っています。


そのうえで、25歳以下の若年層には休日のU25割、シニア層には平日シニア割の制度を構築して、若いファン層の取り込みとチケット需要の平準化を図る。


できれば、これまでチケット難の東京宝塚劇場でこそ、U25割やシニア割設定日を設けて関東圏の新規ファンを開拓せねば、120周年が心もとないと思うのです。

それでも抽選に申し込むファンがいるから



ご無沙汰しております。


宝塚の公演スケジュール見直しに伴い、ファン界隈では確保したチケットを取り上げられたファンの怨嗟の声が渦巻いておりますね。


ライビュ専科の地方民は、宝塚大劇場の公演を見たい場合、最近は旅行会社の観劇バスツアーを利用するようになりました。(チケットはともかく、交通費のドタキャンに泣かされ続けたため)


12月15日に例のニュースが発表された際、管理人は仕事と忘年会の幹事役でバタバタしていて、お知らせを見逃しておりました。


夕方、忘年会に参加している最中に携帯が鳴り、レストランのトイレで


旅行会社の社員:「公演が中止になりましたので、ツアー催行を中止させていただきます。申し訳ございません。」


と連絡を受けて、事態を知るという...


当然、ツアー代は払い戻されるのでお財布が傷むというわけではないのですが、飲み会に戻った際に、あまりに表情が暗かったのでしょうね…


同僚から心配され、


「チケットが飛びました。贔屓が笑顔で舞台に立つためなら、こんなこと、なんちゃでない(讃岐弁訳:どおってことない)。」


あああ...ううう...



「ツアー代は払い戻しやろ?また行けばええやん。」


「てか、それでも宝塚に行くんですね…」


「トップの退団公演です!もう、このイケメンの次の大劇場公演は無いのです!」



この気持ちを理解していただけたのは、歌舞伎ファン(贔屓は市川猿之助)の方だけでした。


同士よ、今年はいろいろありましたね…



年に2~3回生観劇するだけの地方民でさえ、この4年で5~6回はチケットが飛ぶという事態に遭遇しております。


ショックで土曜日は寝込んだものの、日曜日にはむくりと起きて


「諦めたら試合終了だわ。9回裏の逆転、ロスタイムのゴールだってあるわ。友の会の抽選に、ダメもとで申し込んでみよう...」


我ながら、健気というか...マゾというか...


射幸心をあおられているわ。


(まぐれ当たりでないと買えないものを買えた喜びのほうが、いつでも売っているものを買う時の喜びより大きいこと)



つれないホストに翻弄されて、もう縁を切ってやる!と息巻いても、たまに見せる笑顔にほだされて、ずるずる関係を続けているお嬢さんの気持ちが10%くらいは理解できた気がするわ。



まとめ:こんなファンがいる限り、宝塚フォーエバー

感想『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』


人はなぜ同人を書くのか?それは作品への愛を叫ぶためだ。



雪組公演『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』を配信で視聴しました。


-Boiled Doyle on the Toil Trail-


このタイトルの意味をAIに尋ねると


「疲れ果てたドイルが大変な努力を経て何かを達成した」


だそうです。



いやーっ、生田先生は、「シャーロック・ホームズ」シリーズの登場人物も、原作者コナン・ドイルも、ドイルを取り巻く人々も、本当に大好きなんだなあ。


人はなぜ同人を書くのか?


それは、作品への愛を叫ぶためだ。


生田先生は、宝塚の座付き作家として、自分のホームズ&コナンドイルへの愛に満ちた同人作品を大劇場で発表出来て、オタク冥利&作家冥利に尽きるんだろうなあ。



生田 大和による、宝塚ホームズシリーズに共通するテーマは、ホームズファンにとって今も最大の謎である


「『最後の事件』でモリアーティ教授と一緒に滝つぼに落ちたはずのホームズは、なぜ「実は生きていた」設定になったのか?」


についてのアンサーです。



第1弾、宙組版『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』は、「キャラ愛」の同人。


ホームズ、最大のライバルモリアーティ、ホームズが「あの女」と呼ぶアイリーン・アドラー、原作では実現しなかった夢の共演を実現させました。



第2弾、『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』は、『ボヘミアの醜聞』の大ヒットから、『最後の事件』でホームズを”殺した”のち、『空き家の冒険』で彼を”復活”させるに至る経緯の裏には、ドイルと最初の妻であるルイーザとの絆があった、というお話です。


ドイルには最初の妻ルイーザと、2番目の妻ジーンがいたのですが、ドイルの伝記などでは最初の妻ルイーザがどのような人物だったのか、あまり言及されていません。


ルイーザが若いころから闘病していたこともあるのですが...




『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』で描かれている時代のドイルの年譜


1885年(26歳)
ルイーズ・ホーキンズと結婚。


経営する医院が暇すぎて、患者を待つ間に小説執筆にいそしむ。


1891年(32歳)
「ストランド・マガジン」誌にてホームズシリーズの短編掲載を開始し、大人気となる。


1893年(34歳)
幼い頃家を出ていった父チャールズが、長く入院していた精神病院で死去。
妻ルイーズが結核と診断され、長い療養生活に入る。


同年、『最後の事件』でホームズをライヘンバッハの滝から突き落とし、ファンが「ホームズを殺すなんて許さない」と大騒ぎになる。


念願だった歴史小説の執筆に専念するも、作品は世間で評価されず、ファンは「ホームズを生き返らせろ」と熱望する。



1897年(38歳)
ジーン・エリザベス・レッキーと出会い、相愛の仲となる。


1903年(44歳)
『空き家の冒険』にて、死んだことになっていたホームズが復活する。


1906年(47歳)
妻ルイーズ死去。


1907年(48歳)
ジーン・エリザベス・レッキーと再婚する。




...この経緯、ねえ。最初の妻ルイーザに関する史料は他の身内に比べて乏しいそうですが、いろいろ事情がありそうですね。


時代を超えて愛される作家、コナン・ドイル。時代の彼方に時間を止めて「ドイルの最初の妻」としか語られないルイーズを、ドイルの死以降、こんなに愛した人っていたのかしら。


『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』は、「ドイル&ルイーザコンビ萌え」の同人として、愛に溢れた物語でした。