宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

礼&暁のナートゥダンスをご覧になった?



ちょっとおひさしぶりです。


年末から、身内の体調不良によりバタバタしておりました。


病院の待合室で、


文春オンラインの


「2023年・文春オンライン「人気記事5本」発表!【宝塚編】」


という特集を見ながら、


”文春よ、


「2024年・文春オンライン「人気記事5本」発表!【能登半島地震編】」


並みに失礼なタイトルを付けて!


貴誌の本性をみたわ!”


と心の中で吠えつつ、激動の2023年は暮れました。


新年は歌舞伎の配信を見てすごしつつ、心痛むニュースが相次ぎ、気分が沈みがちでしたが、今はだいぶ落ち着いております。





やっとスカステにて、異界「VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)」に棲むもの達による、豪奢なレビューのフィナーレ中継の録画を視聴しました。


作・演出の指田先生の演出は、ルーブル美術館展で見た、古代ローマの女神たちの饗宴を描いた古典派の絵画作品のような、格調が高く均整のとれた色合いが素敵ですね。


衣装の中間色の合わせ方が絶妙で、見ていると(目がチカチカするという意味ではなく)視神経が普段より研ぎ澄まされる快感に浸れました。


おまけの初日映像ダイジェスト!待ってました!


スカステニュースでは「お、話題のあの高速ダンスが始まる!」と期待したところで寸止めとなった「RRR×TAKA"R"AZUKA~√Bheem~」の「ナートゥ」ダンスが!



Naatu Naatu Full Video Song (Telugu) [4K] | RRR | NTR,Ram Charan | MM Keeravaani | SS Rajamouli


※「Naatu」はテルグ語で「自然」「郷土」「民族」など複数の意味を持つそうで、


インド総督の邸宅でのパーティで「Naatu」を踊るのは、宮中晩餐会のあとの舞踏会で、岸和田のだんじりとか河内音頭を踊るようなものらしいです。


映画を見た時は、あまりの高速ダンスに「これは、映像を早送り編集しているのでは?」と疑っていたのですが、


礼さんと暁さんのダンスを見ると、見事に生身の人体でナートゥダンスを再現できたのですね!


ほんの短い映像でしたが、


異界ヴィオレトピアに住むジェンヌ族にとっては、歌うこと&踊ることが、自然で、ふるさとで、アイデンティティだぜ!


という想いは伝わったぜ!

ついに初日!"RRR"&√KABUKI極付印度伝 マハーバーラタ戦記感想



宝塚歌劇団に√TAKA"R"AZUKAがあれば、


2024年の元日、宝塚大劇場のロビーは鏡開きで


「明けまして、そして TAKA"R"AZUKA110周年、おめでとうございます!」


という笑顔で溢れていたのでしょうか。


新年早々荒れる辰年ですが、ついに


『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~(アールアールアール バイ タカラヅカ ~ルートビーム~)』


レビュー・シンドローム
『VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)』


の幕が上がりますね!


管理人はこのお正月は、歌舞伎座で昨年11月に上演された、『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』の元ネタとなった古代インド神話を元にした


『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』


の配信を視聴しておりました。





【舞台映像】歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部 初日ダイジェスト映像



「マハーバーラタ」の「マハー」は「偉大な」、「バラタ」は「バラタ族」を表しているそうです。(インドでは自国のことを「バーラト」と呼ぶ。)


古代インドの天界では、太陽神と帝釈天(たいしゃくてん)が対立していた。


太陽神は人間のクンティ姫(米吉)に息子カルナ(菊之助)を産ませ、平和を以って人間界を平定する救世主として君臨させようと試る。


帝釈天は、力を以って世界を支配するべきだと、こちらもクンティ姫に息子アルジュラ(隼人)を産ませる。


神の子として生まれ、地上に送られたカルナとアルジュラは、地上のバラタ族の王国の105人の兄弟たちによる泥沼の相続争いの中心人物となる。


戦いは、神々の代理戦争の様相を呈する。


カルナは天の父に問う。


”I am GOD'S CHILD (私は神の子供)


この腐敗した世界に堕とされた


How do I live on such a field?
(こんな場所でどうやって生きろと言うの?)


こんなもののために生まれたんじゃない”




鬼束ちひろ - 月光


紅子:真面目に読んだ読者が「?」ですよ。


管理人:まあ、神話の中の神話ですからね。


・人間達が神々の代理戦争←トロイ戦争(イーリアス)?


・クンティ姫が処女懐胎←処女懐胎?


・クンティ姫は、生まれた子カルナを箱に詰めて河に流す←モーセ?


・河に流されたカルナは、親切な御者夫妻に拾われてすくすく育つ←桃太郎?


・王女の婿選びはダンス合戦←RRR?


と、世界中の神話や伝説の元型が全部詰まっているのでは?というほど、怒涛の展開が繰り広げられるのよ。


インドでは「マハーバーラタ」は


「ここに存在するものは他にもある。しかし、ここに存在しないものは、他のどこにもない」


というほど、偉大な古典として愛されているお話だそうです。


物語の主役は、生まれてすぐに河に流されたカルマ。


カルマのきょうだいたちは、王族として生まれた”宿命”として、相続権をかけて争っています。


正義A VS 正義B


というわかりやすい構図です。


カルマは、親を殺された復讐とか、財産を奪われそうだから戦っているわけではなさそうで、


「人は、なぜ争うのか」


「異父弟アルジュラは、戦いに憑りつかれている。私は世界に平和をもたらすために、アルジュラを倒す!」


と、哲学の問いの答えを求めて戦っているフシがあり、


正義A VS 哲学A


の構図になっています。



紅子:戦闘シーンで、いちいち



この腐敗した世界に堕とされた♪


こんなもののために生まれたんじゃない♪



的な哲学が始まるアクション映画みたいな舞台なのね。


管理人:楽しく見て、元気をもらって、2か月後にはすっかり忘れている映画というよりは、


見た後で


How do I live on such a field?


という哲学がじわじわ侵食してくる映画、という趣の舞台でした。



紅子:歌舞伎座で、インド版ハリウッドアクション歌舞伎を見られるのかと思ったら、カンヌ映画祭受賞作の歌舞伎化を見たような印象なのね。



こっちも見ました。



歌舞伎版『ルパン三世』“ルパン”片岡愛之助・“五ェ門”尾上松也・“銭形警部”市川中車 滝登場でびしょ濡れ!笑いあり驚きありの新作歌舞伎『流白浪燦星』公開舞台稽古


ルパン三世:片岡愛之助
石川五ェ門:尾上松也
次元大介:市川笑三郎
峰不二子:市川笑也
銭形警部:市川中車


市川中車(香川照之)さんは、古典歌舞伎に出演しているときは「借りてきた猫」みたいに神妙にしているのだけど、


「るぱーん 御用だあああ  う、取り逃がしたかあああ」


と銭形警部を演じている時の「水を得た魚」っぷりが見ていて楽しかったです。

輝く!?宝塚ライビュ専科大賞2023 1位は!



管理人:気が付けば激動すぎて、2023年9月以前の記憶がコロナ禍前のように遠い、激動の年の瀬ももうすぐ終わり。


紅子:ちょっと悩んでいたのですが、やっぱり「輝く!?宝塚ライビュ専科大賞」を開催します!!



管理人:選考対象は、2023年1月~12月に宝塚大劇場で公演された本公演のうち、いわゆる「お芝居」「1本立てミュージカル」作品とします。


(『PAGAD(パガド)』~世紀の奇術師カリオストロ~は、観劇できなかったため割愛させていただきます)


管理人が書きなぐったポエムな観劇感想記事とともに、まず2位から8位を発表し、最後に1位を発表するランキング形式で1年を振り返ります。


管理人は地方民ゆえ、ほぼライブビューイング、もしくは配信で視聴した感想です。


紅子:作品をランキング付けしないで、大賞のみ発表でいいじゃない。


管理人:そんなご意見もあることは重々承知しております。


あくまで個人の感想ですので、ご理解いただける方のみ!こっそりお覗きください。


宝塚の舞台に何を求めるか、は人によってさまざまな基準があり、そこが宝塚の奥深さだと思います。


役者で見るか、作品で見るか。


「とにかく贔屓がカッコよければ名作」


「ストーリーは多少アレでも、上手い歌をたくさん聴けて耳が幸せだったから名作」


楽しみ方は人それぞれ。


私は見たい映画を役者で選ぶ派か、監督で選ぶ派か、どっちかと言うと監督で選ぶ派です。



私はランキング付けにあたっては、作品の芸術性、独創性、脚本の構成の分かりやすさ、演出効果の伝わりやすさ、出演者の舞台人としての表現など複数の要素を考慮したうえで、


最終的には、


「主役の行動が物語を動かす原動力となっているか」


を基準に決めさせていただきました。



(「宝塚の舞台は主演者を輝かせるためにある」と思っておりますので、先生の題材への思い入れが表面に出過ぎて、肝心の人間ドラマが?となってしまった作品は、座付き作家としていかがなものか、と感じております)


私の独断と偏見を基にした、超個人的なランキングであることをお断りさせていただきます。


では、さっそく発表させていただきます!




第2位『1789 -バスティーユの恋人たち-』



紅子:おや、2位が『1789』ですか。


管理人:『ベルサイユのばら』を過去のものにしていたら、文句なく1位でした。


紅子:そこはハードルが高すぎ…


管理人:音楽、礼真琴はじめ出演者の歌唱は文句なく素晴らしかった。


ただ、ストーリーが、フランス革命に至る経緯、格差社会、マリーアントワネットの覚醒…結局、


「教科書を読んだらわかる」


お話を舞台で再現している感があってねえ。




第3位『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』



宝塚は今や海外ミュージカルや「少年ジャンプ」系の大作ばやり。ディズニー映画もポリコレとか多様性とか、「この作品を通じて、SDGsと多様性への理解を…」ばっかり。


こういう、なーんも考えずに楽しめる、素直になれない恋人たちの恋の行方にやきもきする昭和の王道少女漫画的な展開の舞台は久しぶりでうれしかったです。


ヒロインのラストのあっと驚く行動に、現代人が見ても観劇後考えさせる要素があるのもいいですね。



第4位『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』
-Boiled Doyle on the Toil Trail-



実は3位を鴛鴦~と迷ったのです。


学校の図書室でシャーロック・ホームズシリーズを読んで育った管理人には、原作(&作者と最初の妻)への愛溢れる小ネタたくさんで、絶秒にツボる作品なのですよ。


「作者の題材への愛が出過ぎて、元ネタを知らないとドラマの展開に?となる作品」の感があり、この順位とさせていただきました。


ホームズが作品世界を飛び出して作者に物申す!というアイデアは良かったのですが…その後の展開にもう一工夫あれば、3位でした。





第5位『応天の門』
-若き日の菅原道真の事-


どうせ大劇場で上演するなら、史上有名な平安朝クライムミステリーである、


応天門が炎上!


黒幕は誰だ!


を見たかったです。



第6位『うたかたの恋』



『うたかたの恋』は、大劇場で『エリザベート外伝』として息をつめて見つめるより、


旅行がてら遠征した全ツ会場で


「もしも目の前に白い軍服の皇太子さまが現れて「君を心から愛している」と言われたら…やだ、どうしよう…」


気分で見るほうがいいです。



第7位『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』



2時間以上かけて上演するには、スパイ要素も恋愛要素もスカスカ。


95分にカットしてちょうどよさそうで、でもそれでスピーディな展開にはなれど、より面白くなる予感もしないのです小池先生。



第8位『Lilac(ライラック)の夢路』
-ドロイゼン家の誇り-


管理人:謝先生、事件が舞台で起きていません。


紅子:結局、ドイツに鉄道は開通したんだっけ


管理人:そこがどうでもよくなる「ドイツ鉄道物語」って何ですか。



そして!


第1位『フリューゲル -君がくれた翼-』



もはや世界史の教科書の1ページになった『ベルリンの壁崩壊』を題材にした物語。


教科書を読んだだけではわからなかった、壁の「向こう」で生きてきた人々の想いが歴史のエンジンを動かす原動力となり、蓄積した熱量は、「第9」のメロディーに勇気づけられて壁を越えてあふれ出す。


紅子:「第9」って、毎年12月になると「今年も終わりねえ」と思って聞いているけれど、こんなにすごい曲だったのね!


管理人:私は、こういう作品を求めていたの!




というわけで、輝く!?宝塚ライビュ専科大賞2023でした。


管理人は2023年8月以来宝塚歌劇を生観劇できていないので、2024年こそは、宝塚の舞台を生で見るのが目標です!

ミュージカル『ベートーヴェン』感想







『エリザベート』、『モーツァルト!』、など、日本ミュージカル界でも屈指の人気作品群を手掛けてきたミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)のゴールデンコンビによる、ミュージカル『ベートーヴェン』を配信で視聴いたしました。


『モーツァルト!』では、モーツァルトが作曲した曲を使わずに、自身の才能に殉じた天才の苦悩に迫る挑戦作でした。


『ベートーヴェン』は、偉大な作曲家が聴覚を失う直前に出会った「不滅の恋人」とのエピソードをメインにした物語です。


作品中には、彼がオーケストラやピアノ演奏用に作曲した楽曲をボーカルで歌えるように編曲したものがふんだんに使われています。


※1月1日(月・祝)23:59までアーカイブ配信あり。詳細は上記リンクからご確認ください。


「悲愴」

ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第8番 「悲愴」 - 第2楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #切ない]


「月光」

ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第14番「月光」:第3楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #カッコイイ]


「英雄」、



ベートーヴェン: 交響曲第3番「英雄」:第4楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #元気]



「運命」

ベートーヴェン: 交響曲第5番「運命」:第1楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]



「田園」

ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」 第1楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #元気]


「皇帝」

ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番「皇帝」:第1楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #カッコ良い]


「エリーゼのために」

ベートーヴェン/エリーゼのために pf.Vincenzo Balzani



「第九」

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」:第4楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]/Beethoven:Symphony No. 9, Op. 125, "Choral" IV.




井上芳雄、花總まりと「濃いラブストーリー」 ミュージカル「ベートーヴェン」で共演、「終わるまでには“花ちゃん”と呼べるんじゃないかな」(会見/ミヒャエル・クンツェ シルヴェスター・リーヴァイ)



感想:わかりやすさは大事


いやーっ、普段インストゥルメンタルで聞いている「公共の音楽」を、物語の中で、登場人物たちの「私だけの秘密の思いを打ち明けるソング」として歌詞をつけて歌うのを聞くと、


「この曲は2023年に作曲された」と言われても納得しそうな新しさがあり、250年を経て色あせない楽曲の強さに感服いたしました。


ベートーヴェンの苦悩多き生涯については、今でも学校の音楽の時間に習いますし、この間息子が使っている国語の問題集を見ると、彼が幼少期の父親からの虐待を乗り越えて、作曲家として成功するまでのエピソードが素材として使われていました。


彼の人生を舞台化しようとすると、みなさまご存じ


【父からの虐待】、【弟、そして甥との確執】、【貴族からの独立】、【聴覚喪失の苦悩】といった要素は外せませんし、


フランス革命後の混沌のヨーロッパを舞台に、ナポレオンへの憧れと失望、ゲーテとの友情と確執、といった超大物との人間模様があって、


響け、シンフォニア!


となりがちですよね。宝塚で2021年に上田久美子氏作・演出で上演された『fff』も「難解だ」と言われておりましたね。




【公式】<サンプルムービー>f f f -フォルティッシッシモ-('21年雪組・東京・千秋楽)



雪組公演『f f f -フォルティッシッシモ-』『シルクロード~盗賊と宝石~』初日舞台映像(ロング)








オペラには「オペラセリア」(厳粛な歌劇)や「オペラブッファ」(喜歌劇)などいくつか種類があるそうですが、


ミュージカル版『ベートーヴェン』は、


「ソープオペラ」


ですね。


【父からの虐待】【弟、そして甥との確執】【貴族からの独立】【聴覚喪失の苦悩】の要素もありますが、


物語の8割くらいを、ベートーヴェン(井上芳雄)と、美しい既婚女性アントニー・ブレンターノ(花總まり)との


【叶わぬ恋】


に全振りしています。


舞台では、恋が終わってすぐに、彼の死のシーンになるのです。


個人的には、ソープ・オペラは第1幕で区切りをつけて、第2幕は別のテーマに焦点を当ててもよかったような気もするのですが、


日生劇場にミュージカルを見に来る客は、ベルリンフィルのコンサートに行って


響け、シンフォニア!


を求める客とはまた指向が違うでしょうからね。


井上芳雄氏の、東京藝術大学音楽学部声楽科卒のクラシック発声を存分に生かした朗々とした歌唱はお見事!


花總まりさんは、クラシック楽曲を歌うには声量など課題はあるのでしょうが、「役者として心情を歌う」凄みは図抜けていたと思います。


彼女は数々の「ヒロイン」「女帝」的な傑出した個性の役を演じてきましたが、アントニー・ブレンターノ役は序盤、愛のない結婚をして、高圧的な夫に怯える「平凡な女性」がはまっていて、「花総まりも、さすがに華が…」と思ってしまったのですが、


ベートーヴェンとの恋に浮き立ち、「月光」に祈るメルヘンな場面になると、どんどん若返り、表情に生気が満ちる「舞台のマジック」が画面越しにも伝わるのがすごかったです。

かっこいいトップだよ!彩風咲奈







タカラヅカ・ゴシップに揺れる中、現役のトップさんが報道機関のカメラの前に立ち、異例の緊張感に包まれた退団会見だったと思いますが、記事からもお人柄の伝わる心のこもった会見でしたね。


彩風さんは超絶スタイルに抜群のダンス力、歌唱も及第点の優等生。


お芝居については、カメレオン役者とか憑依型というよりは、「彩風さんはこういう役作りで演じているのだな」という、洋服でいう型紙とか縫い目とか、ちょっと裏地が透けて見えるところがありました。


私は彩風さんのお芝居、好きでしたよ。


たしかに、器用ではなかったかもしれません。


昔の巡礼のお坊さんが、一宿一飯のお礼に大ナタでばばっと彫って置いていった仏像のような、おおらかで、でも役の芯はしっかり掴んだ演技でしたね。


印象的なお役は…「俺たちに明日は無い」という刹那よりも、『 CLYDE&BONNIE 』でなく『BONNIE & CLYDE』とパートナーに名前を先譲る情の深さが印象的だったクライド。


子どもの頃からアスファルトとコンクリートジャングルで育ってきた人には、ちょっと演技力では醸し出せなそうな、田んぼの土の匂いのする『夢介千両みやげ』の夢介。


自分が創作したキャラに人生を乗っ取られかけるトホホな作家を演じた『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』


少年ジャンプ連載作とかザ・歴史大作をカリスマ性でねじ伏せるよりも、どっちかというとカルト的に埋もれていた作品を掘り起こして復活上演したような演目でのお役が印象的です。